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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ


「まーくんと、ともくんが!」

「ケンカしてるの!」

二人は興奮ぎみにステレオで訴え、小さな手で俺のジャージを引っ張った。


まーくんが??
ケンカなんかすんの、あいつ。


「どこで?」


二人に案内されながら小走りで、グランドにでると、小さなジャングルジムの横で、なかなかの迫力の取っ組み合いをしてる二人を見つけた。


ともくんは、まーくんよりひとまわりくらい体が大きい園児だったが、まーくんもひけをとらない戦いぶり。

髪を引っ張ったり、蹴ったり、引っ掻いたり、無茶苦茶だ。


あーあー……派手にやってんなあ……


苦笑いしながら近づくと、心配そうに遠巻きにみていた周りの園児たちが、みんな一様にホッとした顔を見せた。

やめなさいっと、金切り声をあげながら走ってきた女性教諭を制し、俺は黙って、力任せに二人を引き離した。


「……こーら。なにしてんだ」


「だって!こいつが悪いんだ!!」


クシャクシャの髪の毛のまーくんが興奮ぎみに怒鳴ったら、スモックの首部分がびよーんとのびた、ともくんが、

「うっせーよ!あいつがぼーっとしてんのが悪いんだろ!!ばーか!」


と、言って、後ろを指差した。


指差した先に座り込んでるかずくんは、見開いた目を潤ませながらじっと黙ってる。

ハーフパンツからのぞく膝小僧からは、結構な血がでていて。

俺は、女性教諭に目配せした。

頷いた教諭が、かずくんに「保健室行こっか」と、優しく声をかけた。
かずくんは、無言で首をふったけど、教諭はやや強引に抱き上げて、歩いて行った。

二人を見送ると、俺は、まーくんとともくんの前にしゃがみ、二人の目線とあわせて、彼らの目をじっと見た。

まーくんは、悔しそうに肩で息をしながら、まっすぐ俺を見かえして。
ともくんも、面白くなさそうな顔で、こっちを睨んでくる。


いい目してんじゃん。二人とも。


俺は、にっこりと口を開いた。


「まず、……そうだな。ともくんに聞こうか。なんでこうなったの?」

「……こいつらが、先におれたちがドッジボールしてたのに、わりこんできたんだ!」

「ちがうよっ!」

「……まーくんは、今は、だまって?」

俺は、静かにたしなめて、先を促した。


「で?」

「どいてって言ったのにどかなかったから」

「だから?」

「……かずをどけた」

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