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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ


「それは、言葉でお願いしたの?」

「…………おした」

「だから、かずくんは転んだのかな?」

「あいつが勝手にころんだんだ!」


あわてるように言い訳をするともくん。

うーん…そっか。
なんとなく、分かってきた。

でも、それはな。ダメだ。
手をだしたら負けなんだよ?

俺は、うん、と頷いて、まーくんに向き直った。


「じゃ、まーくんに聞くね。なんでこうなったの?」

「サッカーしようとおもって、場所とってたら、いきなりともくんが、かずくんをおしたんだ」

「そうか。……で?」

「かずくんがころんだ。だから、あやまれって言ったのに、ともくんがあやまんないから」

「だから?」

「けった」

すると、ともくんが大きな声で訴えてきた。

「こいつ、飛びげりしてきたんだ!!」

「してないよっ。ちょっと走っただけじゃん!」


飛びげりかよ。
やるじゃん、まーくん(笑)
かずくんのために怒ったんだ、


笑っちゃいけないのに、笑えてきた。
ちっちゃな相葉くん。
夢でも、にのを守ってるんだね。


でもなー。飛びげりか~…。
それもダメだったなあ。


二人がまたもめそうになったから、俺は、二人の小さな手をとった。


「あのね。ケンカ両成敗って知ってる?」

「しらない」

「わかんない」

いきなり難しいことをいわれて、二人は、ふるふると首をふった。
俺は、にっこりして二人の手をぎゅっと握って、しっかりと目をみてやる。


「かずくんを、おした、ともくんもダメだったし、ともくんを蹴ったまーくんもダメだったね。これは、どっちかが悪いとかじゃないよ?手をだしたらダメなんだよ」


二人は悔しそうな複雑そうな顔をしてる。


そりゃそうだな。
まだわかんないか。


俺は、二人の手をそっとつながせた。


「ほら。仲直りの握手。二人とも痛かったろ?次からは言葉で話し合いができたらいいね」

顔にも手にも引っ掻き傷やら、擦りむいた跡がある二人。
やんちゃな勲章だよ。


俺は、嫌いじゃないけどね……。


ケンカなんか山ほどすればいいと思うけど、先生という立場から言うのは、こんな感じかな。


じーっと黙って二人の顔をみていたら。


「……蹴ってごめん」


まーくんが、ぼそりと言った。


「たたいてごめん……」


ともくんも、ぽつりと言った。

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