
キラキラ
第22章 1ミリのユウキ
*****
お先でーす、と、仕事を終えた教諭たちが次々に帰って行く。
「松本先生、お大事になさってくださいね」
養護教諭からかけられる言葉に、潤が申し訳なさそうに、ありがとうございます、と言った。
腫れがひくまで安静に、だそうだ。
所謂、日にち薬ってやつだな。
パタン……と、扉がしまり、みんな出ていったのを見届けて、潤が、ふうと吐息をついた。
潤が右手を負傷したため、筆記用具を使うことができず、日誌や報告ものなどのデスクワークを俺が二人分こなしているために、時間がかかっているチューリップ組である。
他の先生たちをずっと待たせておくのも申し訳ないので、戸締まりを俺たちがして帰り、みんなには先に帰ってもらうことにした。
俺的には、実技より、こういう風に机にむかう方が性にあってるとは思うが、初めての仕事内容を、初めてみる書式に埋めていく作業は、容易ではない。
見よう見まねでやるには限度があり、さっきから頭を悩ませながら片付けてる最中だ。
「……ごめんね」
潤から発信の、何度めか分からない謝罪の言葉。
しょんぼりした声音に、ついつい笑いがこぼれる。
朝から俺を攻撃していた、キツい口調はどこいったんだか?
「いいよ。気にすんな」
これもまた何度言ったか分からない台詞。
潤のためならこんなことなんでもないけれど。
どーでもいいけど、まだこの夢から覚めれないのかな……俺。
無駄にリアルだから、サボったり、無茶苦茶するのも性格上できなくて、くそ真面目にこの設定をこなしてるけれど。
ちょっと疲れてきた。
「コーヒーいれるね」
「……いいよ。松本先生、その手で無理だろ」
「大丈……あっつ!!」
ポットの注ぐボタンを右手でおしこむ力が定まらず、本体自体が動いて、熱湯が派手に潤の手にかかるのをみた。
言わんこっちゃない!
「バカ!大丈夫か?!」
慌ててボールペンを放り出し、駆け寄った。
もはや、潤は泣きそうな顔をして首をふってる。
「大丈夫っ!ごめん」
「ごめんじゃねえだろ。見せてみろ」
隠すようにしてる左手を無理矢理ひねりあげて、蛍光灯の下にさらせば、甲が赤くなってる。
無言でぐいぐい引っ張っていき、流し台に手を差し出させ、水を勢いよくだす。
ジャージャー流れる水が、白い肌をながれてゆく。
お先でーす、と、仕事を終えた教諭たちが次々に帰って行く。
「松本先生、お大事になさってくださいね」
養護教諭からかけられる言葉に、潤が申し訳なさそうに、ありがとうございます、と言った。
腫れがひくまで安静に、だそうだ。
所謂、日にち薬ってやつだな。
パタン……と、扉がしまり、みんな出ていったのを見届けて、潤が、ふうと吐息をついた。
潤が右手を負傷したため、筆記用具を使うことができず、日誌や報告ものなどのデスクワークを俺が二人分こなしているために、時間がかかっているチューリップ組である。
他の先生たちをずっと待たせておくのも申し訳ないので、戸締まりを俺たちがして帰り、みんなには先に帰ってもらうことにした。
俺的には、実技より、こういう風に机にむかう方が性にあってるとは思うが、初めての仕事内容を、初めてみる書式に埋めていく作業は、容易ではない。
見よう見まねでやるには限度があり、さっきから頭を悩ませながら片付けてる最中だ。
「……ごめんね」
潤から発信の、何度めか分からない謝罪の言葉。
しょんぼりした声音に、ついつい笑いがこぼれる。
朝から俺を攻撃していた、キツい口調はどこいったんだか?
「いいよ。気にすんな」
これもまた何度言ったか分からない台詞。
潤のためならこんなことなんでもないけれど。
どーでもいいけど、まだこの夢から覚めれないのかな……俺。
無駄にリアルだから、サボったり、無茶苦茶するのも性格上できなくて、くそ真面目にこの設定をこなしてるけれど。
ちょっと疲れてきた。
「コーヒーいれるね」
「……いいよ。松本先生、その手で無理だろ」
「大丈……あっつ!!」
ポットの注ぐボタンを右手でおしこむ力が定まらず、本体自体が動いて、熱湯が派手に潤の手にかかるのをみた。
言わんこっちゃない!
「バカ!大丈夫か?!」
慌ててボールペンを放り出し、駆け寄った。
もはや、潤は泣きそうな顔をして首をふってる。
「大丈夫っ!ごめん」
「ごめんじゃねえだろ。見せてみろ」
隠すようにしてる左手を無理矢理ひねりあげて、蛍光灯の下にさらせば、甲が赤くなってる。
無言でぐいぐい引っ張っていき、流し台に手を差し出させ、水を勢いよくだす。
ジャージャー流れる水が、白い肌をながれてゆく。
