キラキラ
第3章 フラワー
翔くんと、アイコンタクトがとれた日はなんだかテンションがあがる。
俺は、にやけそうな口元をひきしめて、未だ練習中の相葉くんに、目を向けた。
翔くんは、もともと、分かりやすい人だったけど、好意をもってからは、よりいっそう気にするようになったからか、翔くんが今どうしてほしい、と思ってるか、とか、なんとなく分かる。
もっと細かいことをいえば、お腹がすいてるときの、不機嫌と、仕事絡みの不機嫌の違い、とか。
構ってほしいときと、ほっといてほしいときの違い、とか。ね。
ちなみに、今は、自分のことはメンバーには黙っててほしい顔。
(……りょーかい)
翔くんのことが分かる優越感。
こんなことが、嬉しい今日この頃だ。
うん。
ところで……
「相葉くん、心配なのそこだけ?」
俺は念押しする。
確か週末の音楽番組で初披露するはずだ。
ふたあけて、覚えてませんじゃ洒落にならない。
「う……多分」
「あなた、一通り踊ってみ」
ニノか横から口をだす。
相葉くんが、情けない顔で、もらす。
「えー……一人で?」
「当たり前じゃん」
「ニノ一緒に躍ってよ」
「やだよ」
「じゃあさ……」
やりとりをきいてたリーダーが、どこからかラジカセを持ってきて、プレイボタンに指をかけた。
「フォーメーションも気になるし、ちょっとみんなでやってみよ。まだ、みんな時間あるよね?
」
「え……」
笑いをこらえて、翔くんをチラリとみると、笑うなというように、わざとらしく眉をしかめて、こちらに視線を寄越す。
鶴の一声、ならぬ、リーダーの一声。
「オッケー……んじゃ、やってみよ」
「あ……みんな、ごめんね」
相葉くんが、申し訳なさそうに小さくなってる。
俺は、相葉くんのさらさらの茶髪を、くしゃしゃっとしてやった。
「メンバーだろ」
ニノが傍らで、ふふっと笑う。
「みんなで、復習ってことよ」
俺らは、楽屋のすみに、テーブルやら椅子やら押しやって、できた空間で振りあわせにとりかかった。