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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ

話をしてるうちに、なんだか気持ちが悪くなってきた。

なんでもお見通しのような、こいつの目の色がたまらなくプレッシャーだし。

冗談のようなこいつのゆるい出で立ちが、現実世界と自分のおかれてる摩訶不思議な状況とのギャップを際立たせていて。


……大体さ。そもそも管理人って、なんなの?
神かよ…?

次元を操るなんて、テレビドラマでしかみたことないっつの。


管理人から目をそらし、つらつら考えながら、くしゃりと髪をかきあげる。

「そんな嫌わないでよ」

「……」

優しい穏やかな口調に、ふと顔をむけたら、相葉くん似の管理人は、人の良さそうな笑顔を浮かべてた。

俺は、ふっとため息をついた。


……つくづくこの顔ズルいよなー。
これが、にのとかなら、ポーカーフェイスの裏に別の思いが隠れてるかもって疑えるんだけど。


なんか心まで読まれてる気がしてきた。

あーもーやだやだ。
帰りたい。


俺は、管理人に向き直り、

「もとに戻してよ」

キッパリ言った。

すると管理人は、金色の髪をサラッとゆらし、可愛く小首を傾げた。
そうして諭すように俺の瞳を見つめてきた。

「うん。ちゃんと戻してあげるよ。…でも。幼稚園で学んだ素直な気持ち忘れないでね」

「……お、おお」


そっか。勉強したことになってるんだな、俺。


「潤くんに会いたい?」

ストレートに問われ、一瞬怯んでしまう。

「素直に言ってみて?」

俺は、口を引き結び、上目使いに管理人を見た。
管理人は、さあ、早く、というように、じっとこちらを見つめ返す。


……そんなんいわれても、本人にも言えないことを、なんでさっき会ったばかりのやつに言わなきゃならない?


なのに、管理人は真剣な顔でにじり寄ってくる。
まるで、言うまで帰さないと言わんばかりだ。

「ね、会いたい?」

もう一度聞かれた。


……くそ。
もうヤケだ。


「……会いたい」

ゆるゆる頷いたら、管理人は、オッケーと嬉しそうに呟いた。

「じゃあ。時間は午後11時。スタートはあなたの部屋。課題は素直になること。守れなかったら、もう少し厳しい世界に飛ばすからね」

「は?!」


なんだ、それ!?


「じゃあね、翔くん」

パチリと指をならされた。
厳しい世界って?!と、聞けぬまま。
ふっと目の前が暗くなった。



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