
キラキラ
第23章 🌟🌟🌟
そっと、ミヤの様子を窺う。
付きのものが、酒を飲むわけにもいかないから、と、ミヤは、じっと彫像のようにたたずんだままだ。
恐らく、パーティーが終わるまで何も口にはしないだろう。
さっきしんどそうだったしな…なんか飲ませてやりたいな。
どうせ料理にも手を出さないだろうしなあ。
無表情で、前を見据える茶色い目をみやり、俺は、またワインに口をつけ、グラスを空にした。
上機嫌に話をすすめるジュン王子には悪いけど、ここらへんが潮時だった。
「……ごめんなさい。ちょっと失礼いたします」
ニコリと笑んで、俺は、会釈をする。
ジュン王子は察するように頷き、「では、また後程」と、その場から離れていった。
タラシな言動は嫌いだけど、こいつの、こういう空気をよむ勘は申し分ないな。
ふっと吐息をつき、くるっとミヤに向き直り、手にしてたグラスを渡した。
ミヤは、虚をつかれたように目を見開いた。
「水とってきて。二つ」
「二つ……ですか」
「おまえのも」
「私は…いりませんが」
「いーから。命令」
「……はい」
仕方なく頷いて、ミヤはコツコツと革靴をならし、部屋の壁に並ぶテーブルに向かって歩いてゆく。
本来、仕えるものはこういうパーティーには表だって参加はしないものだから、ミヤが遠慮するのも分からないではないけれど。
黙ってれば、貴族のような気品ある顔してるんだから、俺らを知らない人間には分かりゃしないんだ。
戻ってきたミヤからグラスをうけとり、カチンと軽く音を鳴らした。
「乾杯」
「……何にですか」
クスクス笑って、二人で水のグラスを傾けた。
ミヤは居心地悪そうにしてるけど、かまうもんか。
「レモン入ってるね、これ」
爽やかな後味の水にちょっと感動して、ミヤに同意を求めると、ミヤは、「ええ」と、少し笑った。
その時、入り口がザワザワとざわめくのに気づく。
櫻の国の国王が入ってきたようだった。
厳めしい顔に、口髭をたくわえた、見るからに、厳格な雰囲気をもつ国王は、ゆっくりとした仕草で、一番前の壇上に立ち、一礼した。
水を打ったように静まりかえる広間。
その場にいた人間も、各々腰を折る。
俺も深々と頭を下げた。
「皆様、本日は、我が愚息でありますショウのために、お集まりいただきありがとうございます」
朗々とした声が響いた。
