
キラキラ
第23章 🌟🌟🌟
途中退席した男爵は、娘をショウ王子の嫁に、と常々言い寄ってきていた人間らしい。
国王が、その話自体に、あまり乗り気じゃないのと、その男爵をあまり好ましく思ってないこと、さらに、ショウ王子自身も、そこの娘とあまりフィーリングがあわない、と感じていたようで、結婚話が、あがることはなかったのだが。
「……ああ、あの子の親か」
俺から離れたところで、二人がひそひそしゃべってる。
……なんだよ。
前科者か?
ジュンが、納得というように眉を潜めると、ショウは、うん……と、暗い顔になった。
「……なんであんなやつ呼んだんだよ」
「……仕方ないよ。付き合い自体は古いんだから……」
聞こえてくるどんな情報もマイナスにしか聞こえない。
俺は、ドレスをつかむ指にぎゅっと力をこめた。
……つまりあれだ。
逆恨みってやつか。
俺が、特別扱いされたからだ。
ショウの嫁にって。
公言されたに等しかったからだ。
「……くだらねえ……」
ボソリと吐き捨てた。
俺が落ち着くように、と用意してくれていた紅茶は、すっかりと冷めきっていた。
日も暮れ、闇に包まれ始めた窓の外に、一層の不安が募り、息苦しさとひたすら戦う。
「紅茶……いれかえてあげて」
気づいたジュンが、遠慮がちにさがっていた召し使いに指示する。
その時、俺たちのいる部屋のドアが、コンコンコンとせわしなくノックされた。
ショウが、素早く扉をあけ、何か一言、二言交わしたと思ったら、彼は俺たちの方を向いて告げた。
「……ミヤさんが見つかりました」
「……!」
俺は胸をおさえて立ち上がった。
……ミヤ!
客室のベッドに、ミヤは静かに横たえられていた。
傍らにいた人物が、弾かれたように立ち上がった。
「ショウちゃん!」
「マサキ!?」
なんで、マサキ王子が?と思いながら、俺は真っ先にミヤに駆け寄った。
「ミヤ!」
ミヤは青白い顔をして目を閉じていた。
顔には数ヵ所のアザと擦り傷。
服はところどころ破れ、見える素肌にも血が滲んでいて。
震える手で、ゆっくりとミヤの手を触り、その冷たさに驚いた。
……手首には拘束された時にできるアザ。
「……ミ……ヤ…」
ミヤの手をとり、温もりをわけるように俺の頬にあてた。
我慢してた涙が一気に溢れ、俺はその場に崩れ落ちた。
