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キラキラ

第23章 🌟🌟🌟


窓の外を流れる景色は、櫻の国に行くときと寸分たがわぬ風景。

あの日は、まさか平和な櫻の国であんな事態に巻き込まれるなんて予想もしてなかったし、ミヤと一悶着あるなんて思いもせずに、呑気に景色を眺めていた。

当たり前が当たり前でないことになる可能性があることを、改めて思い知らされた気がする。

俺は、目の前で、窓から吹き込むそよ風に髪をゆらしながら、外をみてるミヤをまじまじと見つめた。

柔らかな白い肌は、一時期荒れていたけれど、今はすべすべした綺麗な色艶にもどっていて。
太陽の光に眩しそうに目を細めている表情は、儚いまでに綺麗で、抱き締めたくなる。

ミヤが、あんなに、俺とのことをいろいろ考えてくれていたなんて、思いもしなかった。
能天気だった自分自身に少なからずショックをうけたのも事実。

……でも、それはミヤとの関係性になんら不満も不安もなかったってことなんだけどな。
立場が違うと、気を使うところも違うのだろうな。

何にせよ。ミヤが、思い直してくれて本当に良かった。
あのまま、放置されていたら、俺は、きっと気がふれていただろう。



ふと、ミヤがごそごそ何かの袋を開けはじめて我に返った。

「……こんぺいとう。食べますか?」

ミヤが、カラフルな砂糖菓子をひとつつまみ出した。
小さくて、コロコロしてて、可愛らしい。

そーいや、この砂糖菓子、マサキが俺にも持ってきてくれたけど、食欲なくて食べなかったんだよなぁ…。

まあ、でも。

「いらね」

恋敵からのものは、食わん。

プイとそっぽを向いてやった。


「まあ、そう言わずに。美味しいですよ」

楽しげな言葉が思ったより近くで聞こえ、ふと目を上げたら、素早く場所を移動してきたミヤが、俺の顎を捉えていた。

「……いらなっ……」

「……」

「…ぅ…ん……」

チュッと音をたてて唇を離された。

ミヤが口移しで押しこんできた小さな菓子。

ふわりとほどけて、甘い味が口のなかに広がる。

「美味しいでしょ…?」

「…うん」

囁かれてコックリ頷いた。

甘いよ……すごく。

「…もうひとついりますか?」

ミヤが優しい顔で尋ねるから、…もう一度コックリ頷いた。

視線が絡み合い。

……ゆっくり重なる唇。


ガラガラ揺れる馬車のなかで、こんぺいとうの袋が、太陽の光にキラリと輝いた。


End

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