
キラキラ
第24章 バースト5
ネクタイを緩めたシャツの隙間から立ち上るのは、いつもの智さんとは違う香り。
身体全てが……そう、他の人物に染められてるのを感じる。
気だるい瞳や、濡れて見える真っ赤な唇。
少し乱れてる髪の毛すら、彼を妖艶にみせてる要因のひとつで。
なに………この人?!
こんな雰囲気だったっけ??
「翔からメール来てたよ……ゆっくりしていきなよね」
ふふっと微笑む目元すら、男を誘うかのような流し目のようにみえて、俺は思いっきり固まってしまった。
その智さんは、コクコクと、美味しそうに水を飲んでる。
その、のけぞった顎から喉へのラインすら、色っぽくうつり、俺は慌ててしまった。
誰?こんな人知らない。
俺が知ってる智さんは、ふんわりして、少し抜けてて、母親のように怒ってる時の翔に弱くて、ピーマンが嫌いな人。
こんな……こんな。
「……なに?」
俺の視線に気づき、智さんが小首を傾げた。
「……潤も水飲みたい?」
「いや、違います!……お、おやすみなさいっ!」
「うん……おやすみ」
クスリと微笑んだ智さんに、もう一度クラっとして、そそくさと部屋を飛び出した。
慌てながらも、かずが寝ているから、と、翔の部屋に静かに入るように心がけて、パタリと後ろ手に扉をしめたら、机に向かっていた翔がクルリと振り返り、
「どうだった?」
と、ニヤニヤして聞いてきた。
びっくりすんなよってこのことか!!
突然、翔の言ってたことを理解する。
俺は、ふるふると首を振り、そのままずるずる座り込んでしまった。
「……キョーレツ。いつもあんななの?」
「帰りが遅い日はな。多分ギリギリまで抱きあってたんだろうな」
「抱きっ……」
「……我が兄ながら、あのフェロモン駄々漏れな姿は、ちょっとひく」
翔は苦笑いして、うーん、と伸びをした。
そうして、ゆっくり立ち上がり、俺のそばに座り込んだ。
とたんうるさく鳴り出す心臓。
さっきの智さんに煽られて、なんだか変な気分だ。
うつむいたまま顔をあげれない俺に、大きな手がのびてきて、俺の頬を包む。
びくりと肩をゆらしたら、翔が、
「キスしよ」
と、低く囁いた。
いい、とも嫌、とも言えないうちに、頬を包まれたまま顔をあげさせられ。
端正な顔が近づいてくるのを確認して、俺はぎこちなく目を閉じた。
