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キラキラ

第24章 バースト5

離脱するタイミング考えてあげないといけないな……と、思案する。

「智さんは、どこにいこうとしてるか知ってるのか?」

「んー…分からな…」

「……なあに?俺の話?」

「わっ!!」

どこから聞いていたのか、いつからいたのか、俺たちの傍らには、今起きました、というような智さんが立っていた。

くしゃくしゃの頭は、あちこちはねていて。
モコモコしたブルーのスエットに、上着をひっかけ、裸足にスリッパという姿には、昨日の妖しい雰囲気の名残など、ひとかけらもない。

ふわあ……と欠伸をして、両手で目をこするしぐさなど、子供か!とつっこみたくなった。

「お、おはようございます」

「ん。おはよ」

朝から勉強?偉いじゃん、とふうわり笑うから、

「いやいや、智さん。もう昼だから!」

と、かずにすかさずつっこまれていた。

「あれ……そうか」

ボリボリ首をかいてる姿は、親父そのもの。
昨日のあの姿は、まぼろしだったんじゃないかとすら思えてきた。
マジで。

「ね。智さん。明日はどこか出かけるの?」

「……なんで?」

「ううん。俺たち、明日遊びに出ようか、って話になってるから。翔さん一人になるなあって思って」

ナイスかず!!

俺が心で拍手していると、智さんは、ああ、そっかあー…と笑った。

「うん。知り合いが個展を開くっていうから。それに顔だそうと思って。なに?お前たち、夜まで遊ぶの?」

「…いや、まだ決めてません」

「翔に早めに言っといてやれよ。あいつ、夕飯のこと気にするから」

はーい、と返事をしたかずが、こっそりウインクして目をあわせてきた。

キッチンに消える智さんの後ろ姿を見送りながら、俺も、うん、と頷いた。

個展だって。

一人で行くのかもしれないけど、恋人と行く可能性はゼロじゃない。

だけどその個展を見届けたら、かずと雅紀にまかせて、俺は帰ろうと決めた。
かずの、本来の目的は、おそらくデートにかわった。
智さんのまわりを嗅ぎまわるのも、たいがいにしないといけないしちょうどいいよな。
なんなら、差し入れ持って、勉強中の翔に会いに戻ろうかなぁ。

ちょっぴり楽しみになってきた。

ふふっと笑って、手元のノートに目をむける。

ああ……また最初から考え直しだ。

テキストを捲りながら、俺はマーカーを手にとった。

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