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キラキラ

第24章 バースト5


「え……」

雅紀が声をあげた。

「意外……智さんの好みって……」

かずもぽつりと呟いた。

「いやいや!違うだろ!」

俺は、すかさずつっこんだ。


そこにあらわれたのは、智さんとあまり背のかわらない、男の人。
華奢な智さんに比べ、ガッシリしてて、艶やかな黒髪で。
何より彼は大きな目鼻だちをしていた。
顔全体で笑って、

「ごめん、待ったー?!」

ってお姉言葉みたいな口調をしてる。

「え……だって、その系統の人っぽくね?」

雅紀が、またぽつりと呟いた。

「好き好き光線でてるよね……」

かずが、唖然としてる。

「いやいや!違うだろ!」

俺がもう一度つっこんだら、智さんが、その人の肩に手を回したのがみえた。

「ほらぁ!」

かずが目を見開いて、俺を見上げる。
雅紀も、ええっ?!って複雑な顔してる。

俺も、ええっ?と言う思いだ……。
この人に乱されて、あんな妖艶な智さんに変身してんの?
マジで?

「もー!智くん、冗談やめてよぉ」

耳障りなほどの高い声が響いたかと思うと、けたけたっという笑い声。
智さんも、目尻をさげて、大笑いしてる。

「いつもの諒さんの真似しただけじゃん」

笑いながら二人じゃれあいながら歩いて行く。
三人でぎこちなく後をつけた。

歩きながら、俺はその諒さんというワードに、違和感を覚えていた。

違う……違う。
確か、智さんの恋人は、マサ…なんとかさんって言ってた気がする。
一回だけ、なんかのはずみに智さんがポロっとこぼした名前がそんな感じだった。

大体にして、あの体つきは、車のなかでキスをしていた後ろ姿とは違うじゃないか。

「やっぱ違うよ…あれは」

楽しそうに談笑しながら歩いている姿を見失わないように、歩調をあわせながら、俺が言うと、かずも、うーん…と言った。

「イメージじゃないよね、確かに」

「あの智さんの顔は、恋人にむける顔というより、完全に友達への顔つきだよね」

雅紀が言うから、そーだよなあ、と三人顔を見合わせた。

智さんと、その相方は、終始じゃれあいながらショッピングモールをぬけ、外に出ていった。

恋人にむける顔ではないかもしれないが、智さんが友人にむける顔もまた、新鮮だった。
智さん、あんな風にふざけて笑うんだ、と、なんだか不思議な感覚だった。

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