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キラキラ

第24章 バースト5



会って一時間もたってないのに、じゃあ、俺は帰る、と言ってその場を去ろうとしたら、かずも雅紀も、一瞬「え」って顔をした。

でも、

「あとは、二人で仲良くデートでもしろよ」

っつったら、二人で顔を見合わせてから、嬉しそうな顔をしてた。

……少し、はにかむかずは、可愛かった。

俺にはあんな顔はできねぇなぁ……。
あんな風に笑えたら、翔は喜ぶのかな。

なんだか、少しナーバスな気分。
自分でも、恥ずかしがるばかりじゃ、駄目だとは思うのだが。

実は手が早い、という翔。
絶対我慢させてるはず。いろいろと。
あんまり、うじうじしてたら、あきられるかな、俺。
 

仲良く並んで歩いて行く二人を、少しのため息と共に見送る。


腕時計に目をおとせば、時間はちょうどお昼時。
冬特有の、低い空は、今にも雨がおちてきそうな曇り空。
ぶらぶらする気にもなれやしなくて。

……やっぱり会いにいこうかな。

翔はきっと勉強してるだろう。
もうすぐ入試本番だもの。

差し入れ持って、顔だして。
少しだけ……ほんの少しだけ一緒にいてもいいかな。
邪魔しないから……同じ部屋にいたい。



気づけば、大野家がある最寄りの駅に降りたっていた。
目についたパン屋で、美味しそうなサンドイッチや、マフィンなんかを買いこむ。

翔は、意外と甘党だから、と、あんぱんや、メロンパンなんかにもトングをのばすと、結構な金額になった。

会計しながら、春休みになったら、アルバイトをしよう、と心にちかう。

その頃には翔も受験はおわっているだろうし、かずたちみたいに、ゆっくりデートもできるだろう。
その時の遊ぶ資金を貯めておかなくちゃ。

可愛らしい黄色のビニール袋をさげて、パン屋をでると、曇天だった空から、細かい霧のような雨がおちてきていた。


「うわっ……マジか」

さあっという音が聞こえそうな霧雨。

真夏の土砂降りの雨ほどではないにしても、地味にきつい。
突然の雨に、道行く人も大慌てで、走ったり、建物に入ったりしてる。

「くそっ……」

腹をきめて、パンを胸に抱えて走り始めたが、着ていたダウンジャケットやら、ジーンズが、まるでミストシャワーにさらされているかのように瞬く間に色をかえてゆく。

「はぁ…っ……さぶっ」  

信号待ちで、足を鳴らしながら呟く。
髪の毛からも水滴が滴ってきた。

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