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キラキラ

第3章 フラワー

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J


翔くんは、俺に、知り合いと飯に行くって言った。
リーダーは、確かに知り合いっちゃ知り合いだけど、……メンバーじゃん。

なんで、隠す必要あんの?

リーダーと飯に行くって言えばいいじゃん。

別に大事な話があるなら、それに無理やり混ざろうなんて俺も思わないよ……?

なんで?

俺、……隠し事されたことが辛い。



どうやら、今の俺は、怒りの比重より、ショックの方が大きいみたいだ。

買い物もしないまま、家に帰ってきた。

テレビも音楽もつけない、沈黙の部屋で、呆けたようにソファーに座って、何時間たっただろう。

ピンポーン

スマホが鳴る。
画面には、翔くんの文字と、今から行くよ、のメッセージ。

俺は、ゆるゆるとスマホを手に取り、震える指でタップする。

『ごめん、急に仕事が入って遅くなりそうだから、また今度にしよう』


送信


そのまま、電源をおとした。

「はあ………」

ため息をついて、髪をかきあげた。
ソファーに頭を乗せて、天井をぼうっと見上げる。
数時間前の、うきうきした気分が嘘のよう。

こんな顔で、翔くんに会えない。
こんな気持ちで、翔くんの目を見れない。


だいたい、相手がリーダーなのがいけなかった。

嵐の年長コンビと言わしめる二人には、自分等とは違う空気感が昔からあって。
その達観した空気には、なんとなく入っていけないんだ。
昔は、そんな二人を眩しくも、うらやましく感じてた。

今は、イライラして苦しくて仕方がない。

翔くんの隣にいるのは、俺じゃなきゃ嫌だって、わがままだと分かってるのに、とめられない。


………嫉妬。



こんな醜い感情、自分が持つなんて思ってもいなかった。

誰かを愛すると、こんなに許容する心って小さくなるものなのか。



苦しい、苦しい、苦しい………。

翔くん、あなたを好きすぎて苦しい……

会いたい。
だけど、……会いたくない。

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