
キラキラ
第3章 フラワー
ふっと、目が覚めると、窓の外は既に太陽が高くのぼり、昼間だった。
(寒……)
窓に目をやると、半分開いてる。
昨晩、一人で飲みながら、暑くなってきたから、少し開けたっけ。
夜風にあたりながら、そのまま寝てしまったみたいだ。
昼夜の寒暖差の大きいこの季節の変わり目は、気をつけろって、翔くんに言われてたのに。
ソファーに寝ていた体をゆっくり起こす。
(い……って……)
二日酔いなのか、風邪なのか。
頭がガンガンした。
片目をつぶりながら、眉をしかめて、こめかみに手をあて、大きく息をはく。
テーブルの上には、昨日手当たり次第飲んだ残骸が、そのままだ。
ビールに、焼酎、飲みかけだったワインのボトルも、いつのまにか全部あけてる。
ほとんど何も食べないまま、ひたすら飲んでたから、胃の中も気持ち悪い。
ふらふらと立ち上がり、窓を閉めた。
電源をおとしたままの真っ暗なスマホをちらりと見て、水を飲もう、とキッチンに向かう。
「………っ……」
突然こみあげてきた嘔吐感。
ヨロヨロとトイレに走り、……咳き込んで、咳き込んで、そのまま床にへたり込んだ。
「はあ……はあ……」
肩をゆらして、激しく呼吸する。
「……………」
情けない。
なんて、無様な姿。
俺は、小さく、はは……と笑った。
翔くんは、こんなにも、俺を臆病にさせる。
つまんねーこと言ってんじゃねーよって、思われるのが怖くて、いつも通りのアクションをおこせない。
なんで隠すの
……たった一言が言えない。
だったら、知らなかったことにしたいのに、そんなこともできなくて、心が悲鳴をあげる。
些細なことなのに……できない自分が嫌になる。
唇を手の甲でぬぐって、立ち上がった。
よろめきながら、洗面所にむかい、顔を洗う。
青白いひどい顔色の自分が映ってる。
心が醜いから、表情まで醜い気がして、俺はそんな自分から目をそらした。
***** ***** *****
ベッドに潜りこみ、うつらうつらして次に目覚めたら夕方だった。
(……ってー……)
この頭痛は、寝たら治るだろうという考えは、甘かった。背筋がぞくぞくして、寒くて震えがとまらない。
カタカタする指先で、額に手をやる。
オフで良かったけど……明日は仕事だ。
(…………ヤバ……)
