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キラキラ

第24章 バースト5

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目の前で、美味しそうにドカ弁を食ってる雅紀を見つめる。

「……いる?」

卵焼きを俺に差し出して、にこりと笑う雅紀に

「いらねぇよ」

と、苦笑して返し、手にもってるあんパンをぱくりと食べた。

昨日、翔に買っていったパンは、二人ではやはり多くて。
智さんにも食べきれないと苦笑され、少し持って帰れ、と、持たされた。
それをそのまま、早弁用に持ってきた俺だ。
あまり甘すぎず、上品な味の餡は、俺好み。
ペットボトルの紅茶をごくごく飲んで、一息つく。

雅紀も、すさまじい早さでご飯をかきこみ、モグモグしながら弁当箱の蓋をした。
バスケ部に在籍している雅紀は、二時間目をすぎた休み時間で、必ず早弁をする。
朝練をこなしてきてるから、腹が減ってしょうがないらしい。

「……昨日は、楽しかったか?」

「ん?もちろん」

にっこり笑って頷く雅紀は、幸せオーラ満開だ。

家電量販店行ってー、牛丼食ってー、カラオケ行ってー、とデートコースを事細かに教えてくれる雅紀は、マジ素直。

「……カラオケなんか、かず、歌うの?」

「歌うよ。あいつ歌メチャうま」

「へぇー意外」

「すごく、綺麗な高音で歌うんだよ」

「ふーん……」

嬉しそうな顔をして話を続ける雅紀に、ふと、つっこみたくなった。
カラオケ……ってことは。二人きりだろ。
密室だろ。 
雅紀って……そういう雰囲気になったとき、どうしてんのかな。

純粋な興味から口を開く。


「……そこで、キスとかした?」

「え?」

雅紀は、ピタリと動きをとめ、……それから、かあっと赤くなった。

なんだ、この反応。
えらく可愛らしいな。 

じっと見ていると、雅紀はぶんぶん首をふった。

「無理。可愛すぎて、手が出せない」

「なんだ、それ」

予想外の答えに、思わず吹き出してしまった。
可愛すぎって!

「なんかなー……かずって神聖な感じすんだよね。逆にキスとかしたことあんのかなって思っちゃう」

「……」

あるぞ。
多分その先も。

俺は思わず口に出しそうになり、ぐっと飲みこんだ。

「……まあ……そのうち。我慢できなくなって、しちゃうかもね。その時はその時かな」

ぽつぽつと語る雅紀は、なんてピュアなのだろう。
つか、俺と雅紀ってピュアだよね……。
大野家の人たちが、ひどく大人だよな。





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