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キラキラ

第3章 フラワー

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潤と連絡がとれない。

昨晩、智くんとわかれた後、意を決して、今から行くよ、と連絡したら、仕事が入ったと、土壇場で断られた。

(……なーんだ……)

潤が断るなんて、よっぽどだったのだろう。
予想以上にガッカリしてる自分にとまどいながら、分かった、と返事をうち、そのままタクシーで帰宅した。

今日はオフのはずだから、今度こそ食事ぐらいは、という気持ちで電話してみる。

……なのに、朝から全く電話が通じない。

呼び出し音すらならず、機械で延々リピートされる女性の声が流れるだけ。

充電が切れている?
映画にでもでかけてる?

いろんな可能性を考えてみたけど、時間がたつにつれ、どれも信憑性に乏しく思えてきて。

わけもなく、不安になる。
胸騒ぎがする。


時刻は午後7時。
俺にしては、早い時間に仕事を終えることができた。

(……行ってみよう……潤のマンションに)

雑誌の撮影だったため、衣装から手早く私服に着替え、外にでる。

その間も、潤に電話してみるも、かわらず音声案内の無機質な声。

マネージャーには、自分で帰ると断り、タクシーに乗り込む。
記憶にあるマンション名から、スマホで住所を割り出し、運転手に伝えると、俺は、はあ……と息をついてリアシートに沈みこんだ。

何もなければそれでいい。

(スマホが壊れてた、とかなら笑っておしまいなんだけどな……。)

流れる景色を見ながら、ぼうっとしていると、音楽番組らしきカーラジオからは、俺らの曲が流れ始めた。

目を閉じて、聴覚にひびく歌声に意識を委ねる。

智くんの、伸びやかな歌声。

ニノの、芯のある歌声。

俺の声。

雅紀の、温かい歌声。

……潤の柔らかい歌声。


リアルな潤の声が聞きたい。
翔くんって、笑う顔がみたい。

ほんの何日か前に、会ったばかりなのに、……会いたい。



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