キラキラ
第24章 バースト5
最近にはみられなかった驚異の集中力で、一瞬で屋上から、自室に移動。
ホッとしながら、リュックを床にほおりなげて階段をダダダっとかけおりた。
解錠し、玄関のドアをあけたら、目の前に苦笑して佇む翔。
すげー音、と言って、翔は、肩をすくめた。
「……階段から落っこったのかと思って、一瞬慌てたぞ」
漆黒の大きな瞳が、くるっと瞬いた。
「……」
……やっと会えた。
俺は、しばらく動けなかった。
黒いジャケットに、えんじ色のチェック柄のマフラーがよく似合ってる。
頬は、寒さでうっすら赤くなっていて。
大きなリュックを背負い、本当に試験が終わって、そのままここに来た、といった風体だった。
「なんだよ?入っていい?」
翔の顔を見つめたまま、ぼんやり突っ立ってる俺に、翔は笑って体当たりをしてきた。
「あ……どうぞ。どうぞ」
はっと我にかえり、体をひいた。
お邪魔しまーす、と言って、俺の側を通り抜けざま、ふわりと香る翔の香りに、胸がドキドキした。
冷えきってる翔を温めたくて、レンジでホットミルクを作ってみた。
確か、ココアの粉もどこかにあったはず……と、そこらじゅうひっかきまわして、未開封の袋を発見し、ココアを作る。
お腹もすいてるかなぁ、と、ポテチの袋をひっつかみ、それらを持って二階にあがった。
「お待たせ」
「ああ……ありがと」
部屋に入ると、翔は、俺の本棚を眺めていたようで、立ったままこちらを振り返った。
「漫画ばっかじゃないんだな」
ココアを受け取り、あちっといいながら口をつける翔。
俺は、ポテチの袋をあけながら、当然じゃないか、という顔をしてみせた。
「でしょ。言ったじゃん」
「今日久し振りに、本屋寄ってきた」
翔は、リュックから五冊ほどの文庫本を出して、カバーをはずし、俺に表紙を見せてくれる。
ずっと読みたかったけど、試験が終わるまでは、と、我慢していたと笑った。
「それ今度映画になるやつの原作?」
「そうそう。読んだら貸すよ。なんなら、映画も見に行くか?」
「え」
「俺と。……二人では嫌か?」
「いやっ……行く!」
行くよ!絶対!
力をこめてぶんぶん頷いたら、翔は、楽しそうに、「じゃ、約束な」、と言った。