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キラキラ

第3章 フラワー


苦しくて、目が覚めた。

「……潤……?」

コホッ……と咳をして、ぼんやりと視線を向けると、心配そうな表情の翔くんが俺を見下ろしてた

「気分は……?」

「……最悪……」

翔くんは、眉を下げて、しょうがないな、と苦笑いした。

額に違和感を感じて手をやると、冷却シートが貼られている。

「これ、飲みな。水分とってねーんだろ?」

翔くんが手にするのは、経口補水液。

グラスに注いでくれるのを、ぼうっとした頭で見上げる。

二つとも家にはなかったものだ。
翔くんが買ってきてくれたんだろう。

「ちょっと起きようか」

優しく促され、小さく頷くと、翔くんが、俺の背中をささえてゆっくり起こしてくれた。

その手のひらが、ふわりと温かくて、安心する。

なんか、立場は全く逆でこんなことあったなあ…と、ぼんやり思う。

翔くんも、同じことを思ってたみたいで、
「こないだと、逆だな」
って、くすって笑った。

「口移ししてやろうか?」

冗談ぽく言われて、ちょっとドキリとする。

「……風邪…移るから……」

小さく笑って断ると、翔くんは困ったように肩をすくめた。

「その顔、反則」

「……なんだよ……?」

「いいや…はい」

グラスを渡されて、震える手でゆっくり傾ける。

よく冷えた液体が、喉をとおり、渇いた体にしみわたるのが分かる。
ああ、俺、喉乾いてたんだな、と気がつく。

「ん。これ薬」

本当は、何か食べてからの方がいいんだけどな、と渡されたのは、白い錠剤。

促されるまま喉に流し込み、ふうと息をついた。
持ってたグラスを受け取り、翔くんが、また体を支えて寝かせてくれる。

コホッと咳をするたびに、頭の芯が疼く。
さっきより、更に熱があがってる感じで、息苦しい。

「なんか食う?」

「いらない……」

「だよな」


翔くんは、

「ここにいるから、もう少し寝たらいいよ」
といって、ベッドの下に座った。

「……うん」  

「……なんか、潤、素直だな、今日は」

「……そう?」

あまり頭がまわらないけれど、翔くんの声をきいてると、安心できて気持ちよくて。
俺は、また目を閉じた。

髪の毛をすいてくれる心地いい感覚に、わけもなく泣けてきて、ポロッとこぼれた涙に気がつかないふり、をする。

ギュッと目をつぶって……意識を手放した。










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