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キラキラ

第3章 フラワー

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S


気だるそうな雰囲気、潤んだ瞳、浅い呼吸。

………ヤバい。

ちょっとドキドキしながら、目を閉じた潤の柔らかい髪をすく。

普段から色気のあるやつなのに、今日はいつもの何倍にもなってる。

おまけに、妙に大人しくて素直だ。

(庇護欲をかきたてられるっていうか……)

いつもの自信満々なJではなく。
全く違う一面に、こっちが狼狽えてしまう。

そう……マジでヤバい。

(潤は、俺を可愛いなんて、気持ち悪いこというけれど、お前だって十分可愛いぞ……)

さっき、口移しをしてやろうか、と声をかけてやったときの、困ったようにはにかんだ表情なんか、本当にドキリとした。
マジで飲ましてしまおうか、と思ったくらいだ。

病人相手に変な気分になってきそうで、俺はギュッと目をつぶって、頭をふる。

(………?)

ふと、潤の顔ををみると、閉じた目からすーっと、涙がこぼれ落ちた。
耳まで伝い、薄いグリーンの枕カバーに小さく染みを作った。

(しんどいのかな……)

心配になり、涙を指先でぬぐってやり、そのまま頬に手をそえる。

(熱いな)


氷枕も買ってきたけど、まだ冷えてないんだよなあ。

額のシートを替えるくらいしかできないけと、……そろそろ替えとくか?

考えていると、潤が小さく熱い息をはいて、

「翔く……ん」

と、呟いた。

「うん……?」

起きてるのかな、と思ったが、どうやらうなされてるみたいだ。
眉を寄せて、俺の名をよんでる。

「……ったく………」

夢うつつで、呼び掛ける相手が、俺だ、ということが、たまらなかった。


「………いるよ。ここに」

耳元で低く囁いてやり、掛け布団の中でグッタリ投げ出された熱い手をそっとつかんだ。

そのまま指をからめて、きゅっと握ってやる。


この間は、俺が潤に助けてもらった。

今日は、俺がそばにいてやるよ。

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