キラキラ
第24章 バースト5
「さあ、食べよ食べよ。智さんはビールですよね?」
冷蔵庫から、ジュースやお茶を出しつつ、奥の方にある何本かのビール缶に手をかける。
すると、
「いや、俺は今日はいいわ」
と、智さんが珍しく断ってきた。
「え。何で?」
お祝いなのに?と、純粋に聞き返したら、智さんは、「うーん…飲めないのに、悪いから………」
と、ムニャムニャ歯切れ悪く答えてる。
「………?」
言ってる意味がイマイチ分からない……。
「飲めないって?」
俺が問い返したと、同時に、
ピーンポーン
と間延びしたチャイムが鳴り響いた。
エントランスの方ではなく、玄関の呼び出しの音色だ。
通常は、いきなりこっちが鳴るのは警戒しないといけない。
なのに、
「あ。思ったより早かったんだ………」
呟いて、玄関に向かう智さんを見て、残る四人で顔を見合わせた。
「え。誰か他にくるの………?」
「誰かって、誰だよ?」
「翔さん、なんか聞いてる?」
「いや、知らねぇ……」
四人で顔をつきあわせて、ボソボソ話していると、パタパタ、とこちらに歩いてくる智さんの足音に続いて、ぺた、ぺたと悠然としたテンポの………。
………どこかで、聞いたような、足音。
あれ、と思っていたら、リビングに入ってきた智さんに続いて、長身の男が現れた。
俺は、その姿を見た瞬間、ドキリとして、思わずかずを振り返った。
かずも、目をパチクリして、驚いた顔をしてる。
「仕事が片付いたら顔を出してくれる予定だったんだけど、早く終わったんだって。紹介するね。………松岡さん。えっと………俺の」
「恋人です。初めまして」
智さんの少し照れたような語尾をすくうようにきっぱりと言い切って、爽やかに礼をしたその人こそ。
「………」
あの日、俺とかずが見てしまった智さんの情事のお相手だった。
あのときは、横顔しか見えなかった。
体も………はっきりいって裸の背中しか覚えてない。
でも、低くてはっきりとした響きをもつこの声は、すごく耳に残っていた。
「………初めまして」
想像通り、いや、それ以上の男前だった。