キラキラ
第24章 バースト5
大笑いしてる松岡さんと、咳き込む翔の間で、どんな顔をしたらいいのか分からない。
え………俺たちのこと知ってんの?!
翔の背中をさすりながら、戸惑っていたら、横から智さんが助け船をだしてくれた。
「………昌宏さん、潤たちをあんまりからかわないでよね」
「悪い、悪い。あんまり初々しいからつい………」
智さんが眉をハノ字に下げて、しょうがないな、というように肩をすくめた。
それは、松岡さんもおまえたちのこと知ってるよ、という合図にも似て。
俺は、照れながら、軽く頷いた。
………まあ、べつに知っていようが、ほんとのことなんだし、かまわないけどね。
水を飲んで、やっと落ち着いた翔が、手の甲で汗を拭った。
「………否定はしませんけど。え………見て分かりますか?」
「わかるわかる。翔の目が、潤は俺のだって言ってる」
「………」
「あと、俺、お前らがキスしてんの見たことあるからさ。このマンションの下で」
「……えっ!?」
「え??」
黙って成り行きを見てた雅紀たちからも、面白そうな声があがった。
翔が、焦った声をあげたと同時に、
俺の心臓がドクンっとなった。
「エントランスで、お別れのちゅうみたいなのしてたぜ?」
………と、松岡さんが言ってる声が、なんだかぼやけて聞こえてきた。
ふっと視界が狭まる。
………ヤバイ。
油断した。
気を張ってなかったら、こうだ。
舌打ちしたい思いをかくしながら、意識をもっていく。
こんこんと沸き上がってくるチカラ。
松岡さんは一般人だ。
この人の前で、跳ぶわけにいかない。
どうしようどうしよう………!
咄嗟に手探りで翔の太ももを掴んだ。
翔は、笑顔で松岡さんと喋りながら、さりげなく机の下に入れた右手で俺の手をとった。
気がついてくれたみたいで、俺の手をぎゅうっと握ってくれる。
やがて、サラサラと流れ込む翔のチカラを感じながら、俺は、話を聞くフリをして椅子にもたれた。
チカラを収めるには、自分でも集中しないといけなくて。
そんな俺に、智さんも気がついた。
「昌宏さん。ローストビーフ食べる?」
「お。食べる食べる。うまそうだな」
何気に話題をふり、俺から松岡さんの視線をそらそうとしてくれてるみたいだ。
きゅっと強く握られた手のひらが熱い。