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キラキラ

第25章 Count 10

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再び、ふうっと目が覚めた。


「………」


すると、さっきとは違う、またもや見たこともない天井。

しばらくゆっくり瞬きをしてぼんやり見つめる。

体に感じるシーツの感触は、自分のベッドではない。
ソファーでもない。

そして多分病院でもない。


カーテンのひかれた薄暗い部屋。
天井をみつめていた目をゆるゆる動かし、首も動かして部屋の中を見渡した。

8畳ほどのこぢんまりした部屋の窓際には机があり、壁際にはキャビネットが設置されてる。
棚に整然とならんだ本や、吊るされたジャケット。
勉強のみをするだけのような、面白味のない部屋だった。

………もちろん見たことのない部屋だ。


「………」


どこだ、ここは………。


ふとベッドの横に置かれた小さな椅子の上に、ぽつんと、スポーツ飲料がおかれているのに気づく。
急に喉の乾きを覚え、ゆっくり半身をおこし、ペットボトルに手を伸ばした。


………もらっちゃうぞ。


大分汗をかいてるボトルは、まだほんのり冷たくて。
熱い手でキャップをあけ、コクコクと、半分ほどを飲み干した。


「ふう………」

ため息をついてうつむいたら、コンコンと遠慮がちなノックの音がした。
つと、そちらに目をむける。


静かに開いたドアの隙間から明るい廊下の光が差し込んでくる。

俺が、ベッドに起き上がっていたからだろう。

逆光になって顔はよく見えないが、長身の男性が入ってきた。

「………大野?起きたか?」

低いやさしいこの声は聞き覚えがあった。


「………長瀬くん」

「………おい。長瀬さん、だろ」

「………」


………どっちでもいーじゃん。
そんなこと気にする人だっけ?


言葉につまってる俺に、長瀬くんはくつくつ笑いながら、壁際のスイッチに手を伸ばした。

パチリと明かりがともり、眩しさに一瞬目をつぶる。

腰に手をあてながら部屋に入ってきた長瀬くんは、黒い上下のラフなジャージ姿。
いかつい髭をはやしていても、笑う目元は優しくて。
先程から戸惑うばかりだった俺は、なんだか妙に安心した。

ここは、どこ?と聞こうとした俺に、長瀬くんは、俺の頬に大きな手をあてた。


「んー…熱いな。……しんどいか?」

「……う………ん。ちょっとだけ」

「メシは?」

「………」







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