キラキラ
第25章 Count 10
………メシ?………なんで、長瀬くんがそんなことを心配してくれるの?
ここは、長瀬くんちなんだろーか?
「今、ちょうど夕食の時間だから。持ってきてやるよ。待ってろ」
男前に笑って、部屋を出ていこうとするから、あわてて遮った。
「あ………ごめん………いらない」
せっかくの申し出だけど、何もほしくなかった。
体調的にも気分的にも。
ところが、長瀬くんは、あきれたような顔で振り返り、その鋭い瞳で俺をじいっと見た。
「………またいつもの我が儘か。病気の時くらい、俺の言うこと大人しくきけよ」
「………」
いつもの………って。
………俺、そんなに我が儘言ってるかな?
二の句が告げれなくて黙ってしまう。
そんな俺に長瀬くんは続けた。
「………病気ってのはな、食わねぇと治らねーんだぞ。今日のメニューは唐揚げだったけど、茂子さんが、別にお粥作ってくれたからよ」
………茂子さん?
誰?
「少しだけでも………な?」
そうして、にっと、笑って長瀬くんが出ていった。
閉じられた扉をみつめる。
俺は、ポツンとまた部屋に取り残される。
じわじわと変な焦燥感にかられた。
いろいろと………なんだかほんとにいろいろと。
わけわからん。
分からないこと、面倒なことがこの身にふりかかってることだけ、理解できる。
だって、さっき見た翔ちゃんたちも変だし。
長瀬くんが言うことも変だし。
ここがどこか分からないし。
マネージャーたちもいないし。
体が動けば、すぐ帰るんだけど、あいにくこの怠さを抱えて、歩き回るほどのタフさが、今はない。
時計は、午後7時を指してる。
俺のスマホとかも見当たらないし。
長瀬くんに言って、マネージャーに連絡とってもらおうかと、ぼんやり思ってたら、
コンコン
と、再びノックの音がした。
長瀬くんかな、と思い、「はい」と、返事をしたら、
「………おーちゃん。大丈夫?」
「………」
これまた、可愛らしい時代の姿をした相葉ちゃんが、片手にトレーを持って現れた。
「長瀬さん、電話の応対中だから、俺がメシ持ってきたよ」
ニコニコ笑うその顔は、ジュニア時代そのものの無垢な瞳をもつ幼い相葉ちゃん。
少し長めの茶髪が、新鮮だった。
「………」
ていうか………。
これ、どーなってんの………?
夢みてんのかな、俺。