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キラキラ

第25章 Count 10


「相葉ちゃん………なんか若返ったね………」

ぽつりと呟いたら、相葉ちゃんは、怖いものをみるような目で俺を見た。

「なに………その呼び方。やめてよ」

「え?」

「いつもみたいに呼んでくんなきゃ、気持ち悪い」

「………」

いつもみたいって………いつも俺は、「あいばちゃん」って呼んでるはずだけど。
思わず黙りこくってしまった俺に、相葉ちゃんは、はい、とスプーンを手渡してくれた。
 
「茂子さん特製の玉子粥。ふーふーしてね」
 
「………茂子さん?」

また出てきた、茂子さん。
いったい誰?
長瀬くんの彼女かな………。

「………誰?」

「え?」

「茂子さんって」 

「はぁ?なに、それ。新手の冗談??」

ウケるーと、相葉ちゃんは、ケタケタ笑った。

「熱で記憶喪失にでもなっちゃった?」

くすくすしながら、お椀を渡されて、俺は、即座に「それだ!」と、思った。
記憶喪失になったことにしよう!

嘘みたいだが、相葉ちゃんなら、騙せそう………。

俺は、大真面目に頷いた。

「実はそうみたい………いろいろ抜けてて。ねぇ、ここはどこ?」

「………」


あれ。やっぱ無理があるかな。


相葉ちゃんは、ぽかんと変な顔をしてる。

「……おーちゃん」

「はい」

「新しい遊び?」


ああ、そーだよ!
………もう、なんだっていいから説明してくれ!!


癇癪を起こしたい気持ちを押さえながら、

「うん。遊び、遊び」

うんうん、と、頷いたら、相葉ちゃんは、またくふっと笑った。


「しょーがないな。つきあったげよ。ここはねー嵐学園の寮でー、えっと茂子さんはー食堂のおばちゃん」

「………」


嵐学園………?聞いたことねぇぞ。


呆然として聞いてたら、相葉ちゃんは、更にすごいことを言い出した。

「でー、さっきの長瀬さんはー寮の管理人でー、俺はー、寮長でー」

「………」


………はい?


「こんなんでいい?」


「………」


いや………まて、ちょっと待ってくれ、


お椀を落っことさなかった俺を誰か褒めてほしい。
それほど、荒唐無稽なこの状況。


なんだ、これ。


俺は、子犬のような目をした相葉ちゃんの顔をじっと見据えた。


「………おまえいくつ?」

「俺?おーちゃんと一緒じゃん」

「いくつ?」

「17」


………めまいがしてきた。

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