キラキラ
第25章 Count 10
額に手をあてられた感覚で、目が覚めた。
温かくて、大きな手のひら。
………松………兄?
ぼんやりした視界が徐々にクリアになっていく。
薄暗い部屋の中、思っていたのとは違う人物の、笑顔が目に入った。
「……長…瀬…く」
呟いて。
なんで………?と、混乱してる間に、彼の大きな手のひらが、俺の額から頬にうつり、長瀬くんは、うん、と頷いた。
「……おはよう。どうだ、気分は」
「…」
「気持ち悪いのは治ったか」
………思い出した。
「……あ…大丈夫」
俺、高校生だったわ。
しかも、なんだっけ。ここは寮だったっけか。
昨夜、相葉ちゃんが言ってたな。
「だな。もう下がってる。若さだな」
長瀬くんは、ニヤリと笑って、俺のおでこをピンと弾いた。
「いて」
「ははっ、もう大丈夫だ」
おでこを押さえながら、思う。
体はかなり軽くなっていた。
すごい汗をかいてるからだろう。
背中がじとっとして、気持ち悪かった。
「食堂来れそうか」
「……食堂?」
「着替えたら、来いよ?」
言って、長瀬さんが出ていく。
……この設定につきあえってか。
どーせ夢だろ。
めんどくさいから、このままもう一度寝てやろうか、と一瞬思ったが、体がベタベタなのはどうにも気持ち悪かった。
ゆっくり起き上がり、部屋の角のクローゼットをあけてみる。
制服やコートがかかっている中に、ちいさな引き出しが何個かあり、そのなかに見覚えのない下着やらTシャツやら、が雑然とつっこんであった。
なかには、俺が絶対着ないような派手な色のビキニパンツとかもあり、ひいてしまう。
………普通のはないのか、普通のは。
そのなかから、黒のボクサーと、Tシャツをさがしあて、ついでに青のスエットも引っ張りだし、もそもそ着替えた。
昨日の残りのスポーツドリンクを飲み干したあと、再びベッドにもぐりこみ、ぼんやりしていたら、
コンコン
と、ドアがなった。
「………」
かなりどーでもよくなっていた俺は、無視を決め込む。
「………智?」
するとちいさな声と共に扉が開いた。
そこから、そっと顔をのぞかせたのは。
「………なんだ、起きてるじゃん」
長瀬さんが、智、食堂来るはずだって言ってたのに、来ないから、と柔らかな笑みで言う翔ちゃんであった。