キラキラ
第25章 Count 10
白い三角巾に割烹着姿の、小柄な女性が厨房からでてきた。
「長瀬くんから、熱が高そうやって聞いてたから、今日も寝込むんや思ってたわ」
良かったねぇ、と、頭をヨシヨシされて、なんだか気恥ずかしかった。
てか、島茂子さんじゃん………!
ちょっとうけるわ。
俺は、苦笑しながら、「ありがとうございます」と答えた。
なんでもありな、この夢。
なんだか楽しくなってきた。
「朝ごはんどないする?いつもの?」
茂子さんはにこにこと、厨房のなかへ進みながら聞いてくれたけど。
いつものって………なんだろう。
でも正直なにも欲しくないし………。
「あの……紅茶ください」
俺は、小さく答えた。
すると、茂子さんは少し怖い顔つきになって、こちらを振り向いた。
「またそんなこと言う。ちゃんと食べな大きくなられへんって言うてるやろ?」
「いや………でも………」
本当に欲しくないし………。
「あんた、今日もあかんかったら、と思って、卵のお粥また作っといたったから。これ食べ!」
どん、とトレーの上にお椀がのった。
ふわふわと湯気のたつそれは、昨日と同じ黄金の色をしてて……鶏の出汁のいい匂いがして…………うん、確かにうまそうだ。
昨日は食欲なくて、あのまま寝てしまったから、せっかくのお粥も食ってなくて。
かといって、今も、取り敢えず、飲み物がほしいかな、くらいだ。
……基本もともと俺、朝飯あんま食わねぇし。
なんなら、コーヒーだけの時もあるし。
マジいらねぇし………
断りたいけど、この茂子さんには、どうにも、かないそうにない。
その証拠にさっきから、隣で翔ちゃんが必死に笑いをこらえてる。
このお椀を手にして席に戻らないと、承知しないとばかりの目力に、俺は、しぶしぶトレーを持ち上げた。
茂子さんは、丸い目を優しく細め、満足そうに頷いて、「たくさん食べるんやで」と、優しく声をかけてくれた。
俺は、曖昧に頷いた。
ずりーな………このキャスティング………。