キラキラ
第25章 Count 10
「え………じゃあさ、智、マジに俺らのこと忘れてんの?」
くりくりした目を見開いて、翔ちゃんが、作業する手をとめた。
「………うん」
………忘れるわけない。
30代のアイドル嵐としてなら、誰よりもおまえらのことはよく知っているんだ。
でも、それをいうとややこしくなると分かっているから。
忘れたことにするのが一番いい。
俺は、小さく頷いた。
パイプ椅子にどっかり座った松潤が、忙しくキーボードをたたきながら、ちらりと顔をあげる。
「信じられないけどな。まあ………でもあながち間違いじゃない気もする。気持ち悪ぃくらい大人しかったぜ。今日は」
「うん。ずっと起きて授業受けてる姿なんか、初めてみたもん。はい、翔ちゃんコーヒー。潤は、オーレでよかった?」
手際よくマグカップを配ってくのは相葉ちゃん。
寮長である立場の彼は、執行部ではないものの、みんなの潤滑油的な役割をしているからか、俺に出入りを認められているんだそうだ。
「おーちゃんは、いつもは、砂糖たっぷりのミルクティーなんだけど……どーする?」
「あ………それでいい」
「分かった」
にっこり笑って、お湯を用意する相葉ちゃん。
にのは、何やらブツブツいいながら電卓をたたいてる。
嵐としての彼らじゃないけれど。
なんだか、一緒にいるだけで、心がホッとするのは、やはりといえばやはりだ。
相葉ちゃんに、「熱いから気をつけて」と、渡されたミルクティー。
ふうふういって、一口含むと、その甘さにまた癒された。
「………ま、確かにいつものツンツンした雰囲気は全くないよね」
そんな俺の仕草をみていた翔ちゃんが、おかしそうにいって、再びコピー用紙の束に目をおとした。
「だろ?今の智なら、翔でも、喧嘩勝てそうだぜ?」
「でもってなんだよ、でもって」
口を尖らす翔ちゃん。
松潤がクスクス笑った。
俺は、………笑うとこかな?
黙ってもう一口ミルクティーを飲んだ。
もうすぐ行われる生徒総会にむけての準備に追われているとかで、生徒会室は資料の山である。
書記の松潤は、ひたすら、パソコンに向かっているし、それぞれみんな忙しそうだ。
「………おーちゃんは、当日、挨拶すればいいんだよ」
不安そうな顔で所在なげに座ってる俺に、相葉ちゃんが気がついて、優しく声をかけてくれた。