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キラキラ

第1章 アーモンド

とは、いっても、俺だってプロだ。
仕事に私情をはさむのは、許されないことくらい承知してる。
…やってやるさ。

そう。顔にさえでなければ…。

しらず、生唾を飲み込んで、気合いをいれた。
…ところが。

近づいてきた翔くんが、俺の前で歩みをとめた。

「お疲れ」
「…うっす」

笑顔で声をかけられただけで、体が熱くなった。

(…ダメだ。ヤバイ)

どうしても、翔くんの唇に目が行く。
メイクのせいで、艶やかに光ってる唇は、いつもより数倍色っぽく見えて。

「…潤?」

フリーズしてる俺を訝しそうに見上げ、翔くんが首をかしげた。
「疲れた?」
「あー…いや、大丈夫」

ほてりかける頬を手のひらで軽くはたいて咳払いする。
「そう。あとちょっと。頑張って」
「…うん」



「はい、じゃあ二人とも向かい合って、視線だけこっちちょうだい」

「うん、いいよー、松本くん櫻井くんの肩に手をおいてみよう」

「次、背中合わせに立って、肩を寄せてこっち向いて」

…地獄だった。

翔くんと触れる場所、彼の息づかい、全てに過剰に反応する自分をおさえるのが精一杯。
こんなことなら。
こんなに自分が意識してしまうなら。

(キス…しなきゃよかった)

「おーい…表情固いよ!」
「あ…すみません」
「櫻井くんも、もう少し笑って」

(…え?)

視線をやると、少し赤い顔をした翔くんが、
「すみません」
って呟いてた。

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