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キラキラ

第3章 フラワー


俺が、どんな思いでいたかなんて、この人は知らないよな。
隠し事されたら、された方は気分悪いって、分かってんのかよ?

そんな綺麗な目で、何食わぬ顔で……やめろよ。

「…………ほっとけよ」

「もしかして、体調崩したのも酒のせいじゃねえの?」

優しい口調だけど、責める響きが少しだけこめられてる。

分かってる。
俺の体を心配してくれてるからだって。 
プロなら、体調管理は、きちんとしろって、諭されてるだけだって。

分かってる。
でも。
翔くんが…

「俺が?」

しまった……口がすべった。

「…………」

「俺がなに?」

翔くんが、怪訝な顔でこちらを見据える。
俺は、いたたまれなくなって、ふいっと顔を背けて、小さく呟いた。

「……飲みにいくからだよ」

「だから、それはもともと……」

「わかってるよ。先約があるのに、それを破れなんていわねーし。そうじゃなくて」

「……じゃあ、なんだよ。」

振り返って、翔くんの顔を見る。
大きな目で、じっと見つめられてると、もう黙ってることができなかった。

ああ、こんな、嫉妬、女みたいで嫌だ。


「……誰と飲みに行ったんだよ」

言ってしまった。


翔くんが黙った。

お互いに目をそらさない。
真顔だった翔くんが、しばらくして、ふっと表情を崩し、そっか………と、漏らした。


「智くんだよ」


「………」

分かってても、その人の名前がでると、わけもなくイラっとして、つい、突き放すような口調になってしまう。

「…………じゃあ、最初から、知り合いとかじゃなくて、リーダーって言えよ。なんで隠す必要あんの」

我慢してた言葉があふれでてしまった。

ダメだな、俺。

「………っ……コホッ」

ここまで一気にしゃべって、激しく咳込んだ。

「……大丈夫かよ」

翔くんが俺の背中をさする。
そして、小さな声で申し訳なさそうに言った。

「うん……そうだな。ごめん。不安にさせたな」

涙目になってしまったのは、止まらない咳のせい。
うまく息が吸えなくて、大きく深呼吸を繰り返す。

「ちょっと……相談事があったんだ。お前に心配かけたくなくて。」

ごめんな、と言われたら、もう黙るしかない。
相談って?とまで、追求するほど、……ガキじゃない。

「ほら、深呼吸……大丈夫かよ」

「……コホッ……」









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