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キラキラ

第3章 フラワー

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(誰と飲みに行ったか?……だって?)

絞り出すような潤の声に、一瞬思考が停止した。

そんなことで?
浴びるほど酒を飲んだっていうのか?
挙げ句のはてに、風邪までひいて?

俺は、文字通りキョトンとしていた。

智くんの名前をふせたのは深い意味なんかない。ただ、相談事の内容が内容なだけに、ちょっと恥ずかしくて、つい知り合いという言葉を使ってしまっただけで。

(……なにこれ。
もしかして、妬いてんのかよ?)

潤が、続けて訴えてきた。

なんで、知り合いなんていうんだ?
なんで、リーダーって言わないんだ?

うわ……。

(妬いてる!ぜってー妬いてる!)


興奮しすぎて、咳き込んでる潤の背中をさすってやりながら、俺は、笑いがこぼれてしょうがなかった。

さながら、猫……潤なら、ロシアンブルーかな。その猫が、毛を逆立たせて、フーッて精一杯威嚇してるみたいだ。

(可愛いやつ……)

不安だったんだな……悪かった。
悪気は全くなかったんだよ。

俺は,ごめんな、と言って、背中をさすり続けた。

ベッドの上でうずくまり、深呼吸をくりかえしてる潤がどうしようもなくいとおしくなった。

「コホッ……はっ……」

涙目で、こちらを見上げてくるから、……たまらなくなり、思わず顔を近づけた。

潤の目が驚きに見開かれるのが分かったけど、かまわずに、すくいあげるように、唇を重ねた。

「……っ」

重なったのはほんの一瞬。

次の瞬間、起き上がった潤に抱きすくめられた。
まだ熱い体で、すごい力で。
俺は膝立ちのまま、のけ反るように潤の力をうけとめてた。

潤は、俺の存在を確かめるかのよう肩口に顔をうずめて、頬をすりよせる。

「…………キスなんかしたら……風邪うつるよ?」

掠れた声で小さくはかれた言葉。
俺は、潤の熱さを感じながら、背中に手をまわした。

「……うつせよ」

「え……」

「お前が元気になるんなら、その風邪もらってやるよ」

「……バカじゃねぇの」

「かもな」

くすくす笑った。


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