キラキラ
第25章 Count 10
結論から言えば、俺の恋人が誰かは、誰も知らなかった。
むしろ、恋人がいることも知らなかった、と、口々に言われる始末だ。
どうやら、俺はとことん自分のことを話さないやつらしくて。
詮索されることも嫌うから、みんなあえてそのへんの話題はスルーだったらしい。
「……そーいえば、時々ふらっといなくなることは、あったよ」
とは、相葉ちゃんの言葉だ。
「俺らが見張ってても、授業とか、たまーにサボったりしてさ。何気なく、どこ言ってたの、と聞いたら、ぼそっと、ちょっとなって言われたことあるよ」
ふーん………そりゃまた。
秘密主義だな。
「………俺らのまわりに、松岡って人いる?」
寮長や、執行部なら知っているだろう、と、試しに聞いてみた。
すると、四人とも首をふった。
センパイにも後輩にも。教師にも。そんな人はいない、と。
「………」
心底がっかりした。
頬杖をついて、授業をすすめる端正な顔立ちの教師を、ぼんやりみつめる。
自分の周りに松兄がいないと分かった時点で、この夢には、著しく興味は失せた。
授業も全てサボろうと、寮のベッドに寝転んでいたところを、長瀬くんにみつかり、そこから相葉ちゃんに連絡がいき、ひっぱられるように、学園に連れてこられた。
「………なんだよ、真面目になるっていってたから、今日は迎えによらなかったのに」
松潤にあきれたように言われたけど。
俺はふて腐れたように、窓の外を眺めていた。
だって、俺にはもうこの世界につきあう意味がねーもん。
確かに面白いけど……授業はもうあきたし。
そろそろこの夢から覚めてもいい。
「大野。聞いてるか」
鋭い言葉がとび、視線をもとにもどせば、木村くんがじっとこちらを見つめていた。
教室中が息をのんでる雰囲気を感じとり、この人の授業の厳しさを思う。
「………はい、聞いてます」
反射的に敬語で答えたら、木村くんは、
「じゃあ、今説明した例題の下にある、類似問題
。前にでて解いてみろ」
と、黒板の前に出てくるように指示してきた。
………げ。分かるわけねーだろ。
なんかドラマみてーだな………と他人事のようにも思う。
いいや。
前に出て「分かりません」って言ってやろ。
立ち上がって一歩踏み出したら、横の席から松潤が素早くノートを渡してくれた。