キラキラ
第25章 Count 10
黒板を前にし、何食わぬ顔でノートを広げたら、シャーペンで小さくチェックしてある箇所を見つける。
少しくせのあるその字体は、俺の知ってる松潤のそれと一緒だった。
見たこともない記号に、目を白黒させながらなんとかそれを書きうつして、くるりと木村くんをふりかえったら、木村くんは、ふんと笑った。
「………優しい友達がいて良かったな」
「…………」
………ばれてんじゃねーか。
まあ、あんだけ書き写すのに時間かかりゃ、自分が解いてないのは一目瞭然だったか。
黙った俺に、木村くんは、鋭い目で俺を見据えた。
「ちゃんと集中して授業を聞かねぇと、次はないぞ」
「………はい」
………こえーって………。
本当に大先輩に怒られてる錯覚に陥りながら、教室中が息を潜めているような緊張感のなか、木村くんに促され、席に戻る。
松潤が、肩をすくめて俺を見上げたから、口パクでサンキュウといって、そっとノートを返した。
さすがに、その時間は、寝ることだけはやめておいた。
そのまま、特別、変化もなく日々は過ぎていった
。
朝になったら、茂子さんの朝食を食べ、松潤たちが迎えにきてくれて、学園に行く。
授業をうけ、生徒会室に寄る。
夕方、寮に帰ったら、五人で茂子さんの夕食を食べ、相葉ちゃんたちと風呂に入り、寝る。
………なんだ、これ。
寮の布団の上でぼんやり思う。
最早、これは夢ではない気がしてきた。
だって、こんなにリアルに、音や匂いが感じられる夢があるだろうか。
たとえ、夢にしたって………長すぎくないか?
だとしたら俺の身にいったい何がおきてるのだろう。
考えても考えても。答えはでなくて。
元来がめんどくさがりな故に、周りに流されることに抵抗がない俺も、さすがに不安になってきた。
………そうなってくると、とたんに体調に変化がおきた。
まず………この俺が眠れない。
眠れないから食えない。
食えないから、ますますぼんやりする。
負のループに完璧にはまった。