キラキラ
第25章 Count 10
「………おーちゃんどうしたの?」
相葉ちゃんが、心配そうな目をしてぽつりと言った。
「………うん?」
「最近、輪をかけて食べなくなったじゃん」
「いるか?」
夕飯の、肉じゃがの皿を押し出したら、あわてるように押し返された。
「いらないよっ。ちゃんと自分のは自分で全部食べなきゃ」
「………欲しくねぇんだよ」
ぼそりと言ったら、お箸をくわえたまま、にのが眉をひそめた。
「智。どうしたの?最近おかしいよ?」
心配そうにむけられる目に、いたたまれなくなる。
………やめてくれよ。
その顔とその口調で、俺の心配なんかしないでほしい。
すごく、わがままな態度をとってる気分になるじゃんか。
お前らには一切関係のないことで、現状に拗ねてるだけなんだ、俺は。
「おかしい………つか、段々もとの智に戻ってきた感じじゃない?この手のかかりかた」
お茶を飲みながら、翔ちゃんが冷静に分析してくれる。
「ま、俺様智に戻ってきただけ、って思えばなんてことない。お前の我が儘も今に始まったことじゃない。ただ、飯は全部食わねぇと。茂子さんが心配するぜ?」
松潤が、俺の心を見透かすように、大きな瞳をむけてくる。
「………うん」
茂子さんを悲しませることは、確かにしたくない。
俺は、高野豆腐を一切れ口に押し込んだ。
優しい味。
鉛がつめこまれたみたいな胃に、そっと染み渡ってゆくようだった。
「………なんか。でも雰囲気ちがうんだよね。なにか困ってる………?」
にのが、小さく聞いてきた。
俺は苦笑して首をふった。
「何も」
お前らには、どうしようもないことだから言えるわけもない。
そして、今のお前らを否定してるようで、その気持ちにも困ってる。
本当に高校生なお前らもいいやつらだから。
………でも、アラサーなあいつらに、そろそろ会いたいんだ。
俺を愛してくれるあの人に会いたいんだ。
…………帰りたい
俺の願いは、ただそれだけ。