キラキラ
第25章 Count 10
目の前で、うっすら微笑んでる学生は、目がぱっちり大きくてなかなかの美形だ。
なのに、その身をまとう雰囲気が不気味すぎて、背中がゾクリとする。
美形が怒るとこえーんだよな………。
つか、暴れん坊おーのくんは、いったいこいつになにしたっていうんだ?
「………ねえ。僕があなたにこないだ言ったこと覚えてる?」
涼やかな口調で尋ねられるが、んなこと分かるわけねーし。
「………知らん」
小さく言ったら、そいつは「………へえ」と、恐ろしく綺麗に笑った。
この状況と、その笑みのアンバランスさに、ほんの少し今の答え方を後悔した。
ガタイのいい、いかにも、なやつも苦手だが、、こーゆー少しイッちゃってるやつは、もっと厄介だ。
「警告は何度もしたよ?………無視したのはあなただからね?」
………だから、なんの警告だっつの。
「………何、言ってっかわかんねーんだけど」
言い返しながら、俺はなんとかこの場から逃れようと、相手のすきを狙ってた。
三対一は、不利だろ。
負け試合に飛び込むほど、俺は無謀じゃない。
「まだそんなこと言うんだ?じゃあ、しょうがないね」
その言葉を合図に、左右から学生がとびかかってきた。
咄嗟に身を翻して避けようとしたけど、一瞬早く腕をつかまえられた。
ギリギリと、両側から腕をねじりあげられ、痛みに顔を歪める。
「………ってーな、こんにゃろ!離せ!」
「離さないよ。分からない人にはお仕置き。ちょっと我慢してなよ」
「……っ…?」
ニヤリと薄気味悪く笑むこいつが、気色悪い。
………お仕置きって。
俺、今からなんかされるんだろうか。
………やらしいことはイヤだぞ!!
警戒度マックスで、目の前のこいつを精一杯の目力で睨んでやるが、そんなもの、どこふく風といった表情に、怖くなる。
瞬間。
「!」
体が前のめりになってる俺の腹部に、そいつの足先がつきささった。
まともに鳩尾に入り、一瞬息が止まった。
「………げほっ…げほ…………てめぇ」
「ふふ……まだだよ?」
今度は平手が俺の頬に飛んできた。
目の前に星が散る。
「……い…ってーな!!」
「………アハハ。いい顔ー」
笑ってるそいつの平手が、今度は反対側から飛んできた。
バチンとすごい音がした。
同時にプチっと俺の中で何かがキレた。