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キラキラ

第25章 Count 10



「生徒総会の準備が終わり次第、生徒指導室に来い」

数学の教師であり、生徒指導の教師でもある木村くんに、氷のような口調で、その場にいた全員呼び出しをくらった。

執行部ではない三人組は、今頃、一足先に事情を聞かれ、ゴリゴリに怒られている最中だろう。

学園内での暴力を伴う喧嘩は、特に御法度……なのだそうだ。

場合によっては、何らかの処分をされることも少なくないという。
厳重注意くらいですめばいいが。


「あーあ…木村につかまるとは思わなかった…あいつの詰めかた嫌いなんだよな………俺」


松潤は、プリンターの電源を落としながらぼやく。

俺はソファに座って、保冷剤でほっぺたを冷やしながら、ぼんやり事の経緯を反芻してて、はた、と気づいた。


……そーいや、誰か、俺は次喧嘩したら、退学とかいってなかったっけ……。
どーしよ。キレた時、なんか知らんやつを蹴った気がする。


まずいなぁ……と、考えていたら、


「どう?ちょっとは痛みはマシになった?」


と、翔ちゃんが心配そうな顔をして俺の隣に座った。

くりくりのドングリ目を見上げる。
この人も、分からない人だ。
柔らかな笑顔を浮かべ、一見ひ弱そうに見える物腰なのに。
相手を蹴り倒してた気がするぞ。
キレたらヤバいタイプかなぁ…。
アラサー翔ちゃんの方は、昔からどれだけ怒っても手は出さなかったからなぁ……。


思いながら、ふっと笑えた。
アラサー翔ちゃんか。

……みんな、元気かな。



「……うん。大丈夫。平気」

「見せて。………ああ、ちょっとアザになってる。あの野郎、思いっきり打ち抜いたんだな…ごめんね」

「………翔ちゃんが謝ることじゃない」

「だって。本当だったら、俺が智の立場になってたかもしれないもん」

「……だとしたら、そもそも騙されて南校舎になんか行ってねーだろ?」

「……そうだけど」


ふふっと笑ったら、翔ちゃんも苦い顔になった。


俺は大丈夫。
ただ……退学は………嫌だな。


すると、俺が考えてることをよんだのか、松潤が言った。


「あいつら蹴ったのは、俺ってことで、みんな口裏あわせろよ」

「えっ……」

「ダメだよ。潤。俺もやった!」

思わぬ言葉に翔ちゃんが噛みついた。

「いや、もし処分されたら執行部から三人も欠員がでることになる。総会前にそれは避けたい」


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