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キラキラ

第25章 Count 10


頑として譲らない松潤を、さんざん説得し、結局やり返したのは、翔ちゃんと松潤の二人だということになった。

俺がそもそも売られた喧嘩だったはずなのに、と訴えても、「智は退学になる」と言われれば黙るしかなくて。

「大丈夫。俺らは優等生だし、前科はないから処分されても軽くすむから」

と、笑う二人について歩き、生徒指導室に向かった。


「大丈夫だよ、おーちゃん。目撃者もいるし、そんな大事にはならないよ」


相葉ちゃんが一生懸命慰めてくれる。


でも、嘘をつくのは心苦しくて。
俺がやらかしたことを被る二人に申し訳なくて。


……やっぱり、本当のことを言って、退学だけは許してくれって、自分で先生に言おう。


今、訴えても、どうせ二人に脚下されるから、あとでその場で直接木村くんに言うことした。


北校舎一階端の生徒指導室に到着する。
この生徒指導室というものは、どんな世界でも、いつの時代でも、無機質な外見なのだな、と思う。

その真っ白な扉を前に、入るぞ、と目配せした松潤が、ふうっとため息をついてコンコン、とノックをした。

 
「執行部です。入ります」


松潤が声をかけると、「入れ」との返事。
その小さな部屋に足を踏み入れたら、鬼の木村くんが窓際に立っていて、もう一人誰かがパイプ椅子に座ってる。

……よくみるとそれは、いかつい風貌の中居くんで。

え、この人も教師なの??

と、俺が固まってると、

げ……中居までいる、と、横で小さく松潤が呟いた。

中居くんは、面倒くさそうに顎で奥に入れ、と促したが、俺と目が合うと、その大きな猫のような目を細めて、しっしっ、と手をふった。


「大野。お前は校長室に行け」

「え……」

「中居先生。大野は何も……」

慌てて翔ちゃんがとりなそうとするが、中居くんは、バッサリ切り捨てた。

「うるせぇな。上からの命令だよ。大野は出ていけ」

「……はい」

心配そうな松潤たちに、大丈夫、と小さく頷き、その場から退出しかけて足をとめた。

「………校長室どこですか」





職員室の隣にある、重厚な扉の前で、佇む。

教えてもらった校長室の前で深呼吸した。


……退学だけは許してもらおう。


……心に決め、静かにノックをした。


「入れ」


凛とした声。


……え。


……全身が固まった。

この声……!

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