
キラキラ
第25章 Count 10
「…あ……あの…?」
温かい広い胸
少し香るタバコの匂い。
ぎゅっと抱き締められたたけで、簡単に心が乱される。
温かくて、どこよりも安心できる場所にほかならない。
どうしてこんなことされてるのか。
ここの設定は、やっぱり、俺らは恋人なの?とか。
グルグルいろんな思いが胸に渦巻く。
抱き締められたまま、じっとしていたら、耳元で囁かれた。
「泣くな」
「…あの……」
「そんな顔されたら、校長でいられなくなるだろうが、バカ」
「……松兄」
校長でいられなくなる?
その言葉、深読みしてもいいの?
「ったく。全然ここに来ねぇし、電話もメールもシカトだし、俺の方が泣きたかったっつの」
俺からは立場上アクション起こせねーんだから、と、松兄が言ってくれて、ようやく、ショックででていた涙が、安堵した涙にかわった。
良かった……この夢、俺たちも恋人同士の設定は変わらないんだ。
「……良かった……」
「何がだよ。泣くなって」
「良かった……」
松兄にしがみついたままグスグス鼻をならしていたら、松兄の大きな手がゆっくりと俺の背中を撫でた。
そして、松兄は、軽くため息をついた。
「……やっぱり、おまえ、痩せただろ……全然食わないって、姉ちゃんが言ってた」
「………」
………姉ちゃん?
「唯一タマゴサンドは完食したっつってたけど」
……姉ちゃん?……姉ちゃんて。まさか。
「………茂子さんのこと?」
「他に誰がいんだよ。茂子に何かいわれたか」
「えっ!?お姉さん?!」
「……今さらだろうが。何いってんだ」
あきれたようにいう松兄に、俺は開いた口がふさがらない。
一番びっくりした設定かも!
なんだかおかしくなってきて、俺は松兄にしがみついたまま、クスクス笑った。
「……美味しかったよ、あのサンドイッチ」
「おまえ、好きだもんな。島家直伝のタマゴサンド。まあ、俺が作った方が、100万倍美味いだろうがな」
「………」
……島家?
「松兄……」
「……つか、おまえ、おれの旧姓知ってたっけ?」
「旧姓?」
「松岡は、旧姓だ。そうじゃなくて、いつもみたいに呼べよ」
「いつもみたいに……」
「昌宏って」
まさひろ?!
んな呼び方、えっち中も呼んだことないし!
