キラキラ
第25章 Count 10
無事に収録を終え、帰り支度をしていたら、スマホがメッセージ受信を告げる音が鳴った。
画面に指を滑らせてでてきた名前に、心臓がトクンと音をたてる。
学園の校長だった彼。
翔ちゃんたちがみんな若いなか、あの校長だけは、リアルなあの人と年齢が近かった気がする。
『終わったら連絡しろ』
たった一言の文字が、らしくて笑えた。
終わった
と、こちらも一言だけの文字をうちこむ。
すぐに既読がつき、15分後に局の駐車場で、と返事がきた。
会いたくてたまらなかった人とようやく会えたとたんに、あのヘンテコな緑の相葉ちゃんに邪魔されたから、想いが不完全燃焼で。
連絡しようかな………と思っていたところだから素直に嬉しい。
はやる気持ちを押さえながら、お先、といって楽屋を出るときには、みんなから「ゆっくり寝ろよ」「お大事に」と、口々に声をかけられた。
ありがとね。
高校生なお前たちも面白かったけど、やっぱり、アラサーの大人なお前たちが好きだよ。
優しい眼差しに手を振り返し、俺は駐車場に向かった。
広い局の駐車場のなかに、松兄の愛車を見つけて駆け寄った。
ひょこっとのぞきこんだら、松兄は、にやっと笑って右手をあげた。
助手席側にまわり、乗り込む。
久しぶりの松兄の車の香りを、すうっと吸い込むと、なんだか懐かしくて胸がいっぱいになった。
ありがとね、とお礼を言おうと顔をあげたら、
「体は大丈夫か」
と、心配そうに尋ねられる。
………あれ。
「なんで知ってるの?」
「翔が連絡くれた」
翔ちゃんは、俺と松兄の関係を唯一知っている人物。
でも、今日なんか、俺を心配して、ずっと一緒に行動してたのに。
スマホなんかいじってたっけ?
「………いつのまに」
「珍しくお前が体調が悪そうだから、迎えに来てやって、って。どうした?腹でも冷やしたか」
「ううん。知恵熱。もう治った」
首を振って微笑んでみせたら、松兄の大きな手のひらが俺の頬を包んだ。
親指が、そっと俺の頬をなぞる。
「お前………知恵熱は、赤ん坊がなるやつだぞ」
「ふふ。だってみんながそういうから」
柔らかく言い返すと、ふっと笑んだ松兄は、優しく唇を押し当ててきた。