キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
「立てるか」
背中を擦ってやる。
聞けば下腹部に、蹴りを入れられたとかで、彼はうずくまったまま、悔しそうに唇をかんでいた。
「………あーいうのは、ほっといた方がいいぜ」
ややこしいことに絡めば、経験上ろくなことがおきないことを知ってる俺は忠告してやる。
すると、そいつは俺を見上げて力なく笑った。
「ダメなんだ………性格上ほっとけなくて」
サラサラの黒い前髪から、のぞくのは、大きな二重の漆黒の瞳。
白い肌に、柔らかそうな紅い唇。
びっくりするくらいの綺麗な顔立ちに、息をのんだ。
そりゃ、喧嘩慣れしていないだろう。
いかにも、な、お坊っちゃまだ。
「も………大丈夫、ありがと」
「あ………ああ」
ゆっくり体をおこすのを、見つめていたら、これまたすらりとしたスタイルの見事な八頭身の持ち主で。
パタパタと、膝の砂を払っているのを、ぼんやり眺める。
ほぉ………いるとこにはいるんだな、こーゆーやつ。
こんなとここないで芸能事務所でも入ったらいいのに。
「君も、新入生?」
「………え?」
「いや、カバン。でっかいから」
そういってふわりと笑う笑顔に、思わず目を奪われる。
「あ………ああ。そうだよ」
俺が、ぎくしゃくと頷くと、そいつは、カバンをよいしょ、と担ぎ直し、握手とばかりに、右手を出した。
「じゃあ同級生だね。俺、櫻井翔。よろしく」
差し出された右手は綺麗な細い指をしていて。
汗ばんだ自分の手をズボンでふいて、そっとその手をとる。
「………松本潤。よろしく」
ぼそりと答えたら、そいつ………櫻井はニッコリ笑い、ぎゅっと手を握りしめたのだった。