テキストサイズ

キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~



寮への道のりを二人で歩く。
聞けば、櫻井は中等部からの持ち上がり組という。


「さっきの素行の悪そうなやつも持ち上がりだよ」

「……あのヤンキーが…?」

「うん。大野っていうんだ。中等部の終わり頃に編入してきたんだけど………」


櫻井は寂しそうに笑った。


「俺、学級委員してたからさ。お節介なのは分かってたけど、いろいろ教えてあげてたんだ。でもずーっとあんな感じ。ニコリともしてくんねーの」

「ふーん………」

「しまいには、俺も意地になってさ。絶対笑わせてやる!なんて思ってたけど…」

「でも………そんで、蹴られてたら世話ねーじゃん」

「………そうなんだよね」


的を得た俺の言葉に、むっと口をとがらす櫻井が可愛くみえて、俺は、ぷっと吹き出した。
俺より少し背の低い櫻井は、じとっとにらみあげてくる。

いや、全然こわくねーし(笑)


「なんだよ、笑うなよ」

「いや、悪い悪い(笑)」

「悪いって思ってねーだろ!」


俺らはアハハっとじゃれあいながら、歩いた。

不思議と、この櫻井という男には、構える必要のない何かを感じて、話しててとても楽だった。
ついさっき出会ったばかりなのに。


「松本はさ、どこから来たの?」

「………潤」

「え?」

「潤、でいーよ。俺も翔って呼ぶ」

「………うん。潤」


翔が、はにかむような顔で、微笑んだ。
やっぱ綺麗なやつだな、と思った。




寮では、気の良さそうな上級生たちが待ち構えていて、到着した新入生それぞれ一人一人に、入寮の説明をしてくれた。


「なんか質問ある?」


風呂や食堂の場所、簡単な決まりごとなどを説明してもらい、最後に俺が生活する部屋へと連れていってくれながら、その上級生は朗らかに話しかけてくれた。


「いえ…大丈夫です」

「そ?……まぁ、おいおい慣れてくわ。悪いやつはおらへん思うし。楽しんでいこな」


イントネーションは完全に関西。

全国から集まってくる学園なんだなぁ、と改めて感じさせられる。


「はい………」


俺は小さく頷いた。


「ほんなら、部屋でしばらくユックリしといて。放送入ったら大ホール来てな。………205。ここや」


言って、扉をあけたら、一足先に部屋にいた人物がビックリした顔で振り返った。


「ルームメートは、………櫻井翔くんやって」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ