キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
翔とは、寮の部屋も同じなら、学園のクラスも一緒というものすごい偶然が重なり。
俺らがいつも行動を共にし、仲良くなっていくのは必然だった。
「潤。課題終わった?」
寮の部屋では、背中合わせに設置されてる机。
俺が、いまだ解けない問題と向き合い、うんうん頭を抱えてると、後ろからのんきな声がかけられる。
「……まだ。わっかんねー……」
「どれ」
椅子をくるりと反転させ、座ったままカラカラと軽い音をたてながら移動し、ひょいと俺の手元をのぞきこむ翔。
ふわりとかおるシャンプーのいい匂いに、どぎまぎする。
………野郎相手に、時々ドキリとしてしまう自分に我ながらひく。
俺は、翔にバレないように深呼吸した。
「えっと、これはね……」
そんな風に思われてるとは、露も知らない翔は、俺からシャーペンを受け取り、サラサラとノートのあいたスペースに計算式を書いてゆく。
翔は、とにかく頭のいい男だった。
文武両道をうたうこの学園の性質上、そこそこ運動神経があり、そこそこ頭のいいやつが集まった集団ではあるのだが、翔の頭脳はずば抜けていた。
「ん。この公式で………こうしたらほら」
「……ああ。そっか。サンキュー」
「どういたしまして。ね、これ終わったら風呂行こうよ」
「………ああ。ちょい待ってな」
「ん」
翔は、笑顔をのこし、再びカラカラと音をたて、自分の机にもどっていった。
その後ろ姿をチラリと振り返り、俺は、ノートに目を落とした。
天才的な頭と、ルックスで、非の打ち所のない男の翔。
なのだが。
最近ひとつ分かったことがある。
『なぁ………潤。あれってなにに使うの?』
うそだろ。
こいつは、高校生男子が普通に知っているようなことを知らない。
特に疎いのが、性関連。
猥談とかしたことねーの?
聖人君子かおまえは!と、つっこみたくなる。
クラスメイトが囲んで見てる雑誌の見出し記事を普通の顔で口に出すアンバランスさが、危なっかしすぎる………。
『………おまえは多分使うことはないから知らなくていいんじゃね?』
ちらりと目をやると、雑誌の特集記事は、所謂大人の玩具。
可愛い顔で、ローターって?とか言ってんじゃねーよ。
ため息混じりに、そう答えてやると、ふーん……とあっさり頷いてたりするのだ。
信じらんねぇ…。