テキストサイズ

キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


「このへん煮えたぞ~」

鍋奉行をしてくれてる翔さんに、次々に肉を差し出され、ありがとうございます、と頬張った。

うっま!

適度に脂の入った柔らかな肉。
これ絶対高い肉だ。

ネギや焼き豆腐をそっちのけにして、促されるままに、肉を次々に卵にからめては、ペロリと食べてゆく。

潤も、美味しいと笑顔で口を動かし、少食なかずも、珍しくよく食べているなかで、ふと、中島さんの箸があまり動いてないことに気づいた。

翔さんが、

「健人食べてるかー?」

気をつかって、中島さんの皿に肉をいれようとするも、そもそも中身が減らないから追加できない。

しばらくして、苦笑いした翔さんは、静かに箸をおいた。

「……そろそろ何があったか、聞かせてもらおうかな」


中島さんは、曖昧に笑って、うつむいた。

長い前髪がサラサラと顔をかくすから、表情はよく分からない。
だけど、無理に笑おうとする歪んだ口元が、泣きそうにみえて、ドキリとした。


俺も思わず箸をおいた。

かずも潤も、黙った。

グツグツと割下が煮える音だけが静かなリビングに響いてる。

しばらくの沈黙ののち、中島さんは、吐息とともに、意を決したように顔をあげ、真っ直ぐに翔さんの顔をみた。

「……ここにいるみんなって、それぞれつきあってるって言ったよな?」

「……っ」

「……」

「………」

「……そうだよ」


俺らがそれぞれ息をのんだ中、翔さんだけが静かに頷いた。

自分達はマイノリティなのは分かってる。

そして周りに声高に言い回ることは得策じゃない関係であることも分かってる。

なのに、中島さんは、そのことを知ってる。
……翔さんが話したんだろうか。

なにか理由があってのことだろうけれど…。


固唾を飲んで話の先を待っていたら、中島さんは、ポツリと続けた。


「……飽きられたかもしれない。俺」

「……風磨にか?」


そんなバカなというような顔をして驚く翔さん。

俺たちには話がみえなくて。
かずと潤と、三人で目をあわせて、小さく首をひねった。

そんななか、中島さんは、弱々しく呟いた。

「俺になくて、女の子にあるものって……なに?」

「健人……」

「男同士に必要な魅力って……なに?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ