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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


最終的に、少しだけ笑顔が増え、元気になった中島さんをマンション下まで送った翔さんが、部屋に帰ってきた。

潤がいれてくれた二杯目のコーヒーを飲みながら、俺らは「おかえりなさい」と声をかける。

翔さんは、申し訳なさそうに微笑んで、ありがとな。みんな、と言った。

「いいえ……」

静かに首をふる。

潤の隣に腰かけた翔さんは、コーヒーを一口口に含んで、ふっと一息ついた。


「……あいつのあんな姿、初めてみた。いつももっと軽くてチャライんだ」

「……チャライ?」

「そう。あまり本心を表にださないタイプでさ。オチャラけて、周りに対する心の鎧をかためて。……でも、今日の姿が本来のあいつなんだろうな」


そういって翔さんは、昔を思い出す目になり、ポツポツと語ってくれた。


風磨さんと中島さんとは、高校からのつきあいだという。
二人がつきあいだした頃も知っているし、どれだけ仲が良かったかも知っている、と。

軽い中島さんの手綱を、硬い風磨さんが、ぎゅっと握りしめているような、そんな関係だった、と。


「……だからさ、こういう風にギクシャクする二人を見るのは正直初めてで……俺の方が戸惑っちまった。お前らがいて良かった」


翔さんは苦笑いをして、ソファーの背もたれに背を預け、ため息をついた。


「……風磨がどう思ってるか、だな」

「うん…そうだね」
  

潤が頷いて、考えるような顔をした。


「ねえ、翔。風磨さんの大学の学祭っていつ?」


カウンターに置きっぱなしだったスマホが、ふわりと宙をまい、翔さんの手のひらにおさまる。

その画面に指を這わせ、翔さんは、「来週の土日だな」と言った。


潤は続けた。


「行こうよ。中島さん連れてさ」

「……健人を?」

「そう。そんで、元通りになれるキッカケが作れるなら……作ってあげたい。ダメ?」


潤が訴える言葉に、かずが頷いて、俺を振り返った。

……かずも見守りたいんだね。

俺も頷いた。


乗りかかった船だ。
あの人たちの恋がうまくいけばいい、と俺も願うから。

俺らも行こうか。

でさ、……ちょっと便乗しちゃおうと思うよ。

中島さんがうまく仲直りできたら、俺も、かずに言うんだ。

もう少し、深い関係になりたいって。

だって、俺もかずが本当に好きだもん。
この想い、誤魔化しちゃ駄目だよね……?

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