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キラキラ

第28章 🌟🌟🌟🌠


苦し紛れに自分の机に視線をやると、一冊の画集が目に入った。

ショウちゃんは、ユーリに画集をプレゼントしていたが、俺にもくれていて。
ユーリが持っているものとは、また違う画家のものが手元にあった。


これこれ、これがあった!


「これなんだけどさ」


手にとって、ミヤさんの隣に座った。
異国のこの画集は、今まで見たことのないタッチの作品で、俺はとても気に入っていた。


「……すごい……変わった作品ですね」


表紙をみたミヤさんが、へぇ……というように感心した表情になったのが嬉しくて、俺は、でしょ?とページを繰った。

この画集にのってるすべての作品には、共通の青い山が描かれている。

その山を背景に、または中心に描かれる絵はとても力強くて。

パラリ……パラリとゆっくりページを繰る。

ミヤさんが食い入るように見てくれてるのが分かる。

ひときわ目を引く大きな波の絵。
青く荒々しい波が大きくうねる様は、静と動のバランスが秀逸だ。

ミヤさんは、ハァーとためいきをついて、


「……素晴らしいです」


と、言った。


「……すごいよね。これ描いた人って、いろんな画家に影響を与えた人なんだって」

「……マサキ様は絵がお好きなんですか?」

「鑑賞するのはね。描くのは下手クソだよ」

「……そうでしたか」


ミヤさんはクスクス笑った。
その笑顔がとても可愛い。


こんな近くにミヤさんが座っている、という事実が夢みたいで、俺は、持ってる画集をあれこれ出してきては、ミヤさんの前に並べた。

ミヤさんは、にこにこしながら、それらを楽しそうに眺めてくれた。





紅茶を飲んでしまったミヤさんのカップに気づき、二杯目をいれようと立ち上がったら、ミヤさんに柔らかく制された。


「……そろそろ戻りますね」

「あ……そうか。そうだね」


いくらなんでも主人をさしおいて、付き人がいつまでもお茶をしていたらまずいよね。


目に見えてがっかりした顔になった俺に、ミヤさんは、申し訳なさそうに微笑んで、ぺこりと頭を下げた。


「素敵な絵を見せてくださってありがとうございました」

「……ううん。こちらこそつきあってくれてありがとう」



嬉しかった。
初めて、二人っきりでゆっくりとした時間が過ごせた。

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