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キラキラ

第28章 🌟🌟🌟🌠



「……お誕生日おめでとうございます」

「えっ」



サトコ様のお帰りを見送りにいったら、サトコ様は、馬車から大きな包みを出してきて、俺に差し出した。


「明日はお誕生日……ですよね?」

「そ……そうですが……なんで?」


なんでご存知なの?


俺は、ショウちゃんみたいに誕生日パーティーを開くのは、どうにも恥ずかしくて、断ってる。
もともと前に出ていくタイプでもないし。
だから、俺の誕生日なんて身内と親しい友人以外誰も知らないはずだった。


「優しいあなたのお友達が、文を送ってくださいました。ほんとなら、お妃様のご用命の品とともに送るだけのはずでしたが……わたくしたちから直接お渡しできる環境になったので」


と、姫が、面白くない顔で、チラリと後ろに視線をやれば、ミヤさんが大きな花束を抱えていた。

ミヤさんは、にこりと笑って俺に歩み寄り、その花束を俺に差し出してくれた。


「……おめでとうございます」

「あ……ありがとうございます」


俺はバカみたいにポカンと口をあけて、その花束を受け取った。


鼻を寄せる。

いい香り……

じわじわと嬉しさが込み上げてくる。


ってゆーか。ってゆーか。

ミヤさんから……ミヤさんから花束をもらったぞ!!!

もう俺、死んでもいい……。




「またいらしてくださいね」


ついてきていたダイゴがお声をかけたら、サトコ様は曖昧に笑って頷いた。

それは、もう来ないぞ、とでも言っているかのような目。


……ふふ。まったく、正直な方だな。
ヤキモチの焼き方が可愛らしくて笑っちゃうよ。




「……では失礼します」

ミヤさんが馬車の扉をあけると、こちらに一礼して、サトコ様が乗り込んだ。


その彼らの後ろ姿を見ていたら、俺は、どうにも気持ちが押さえきれなくなってきて。

花束と包みをダイゴにおしつけると、扉の横に控えてたミヤさんに歩み寄って、その華奢な体をおもいっきり抱きしめた。


「…………っ マサキ様?!」

「……ちょっ……てめー何しやがる!!!」


戸惑うミヤさんの驚いた声に、慌てて顔を出した姫の怒鳴り声。


……最後くらいいいでしょ?


くふふっと笑って、俺は、ミヤさんの細い体をもう一度力をこめて抱き込んだ。



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