
キラキラ
第28章 🌟🌟🌟🌠
「……悪い人ですね」
遠く離れて行く馬車を眺めていると、ダイゴが俺を見やり、楽しそうに呟いた。
俺は、花束を抱え直して、ふふふ、と肩をすくめた。
「……だってさ、部屋で二人っきりのときは、我慢したんだもん。姫様の前でなら、パフォーマンスみたいだし、いいっしょ?」
「いいかどうかは、分かりませんがね。姫様、めちゃめちゃ怒ってましたよ」
「うん。でも、あの姫様は怒っても怖くないし」
「……マサキ様の方が一枚上手ですねぇ……」
「くふ」
プリプリ怒ったサトコ様にひっぺがされたミヤさんは馬車に押し込まれ。
ごきげんよう!!と、怒鳴った姫の声とともに、お二人は嵐のように去っていった。
「さて……もどりますか」
「……ああ」
ガラガラ走って行く馬車も見えなくなり、俺らは城内に踵をかえした。
ダイゴと並んで歩きながら、花束に再び顔を寄せる。
黄色い小ぶりな薔薇をふんだんに取り入れた、豪華なものだ。
「……綺麗ですね」
「そうだね…」
この黄色い薔薇は、ミヤさんのようだな、と思う。
赤い薔薇ほど自己主張しなくて。
柔らかくまわりに溶け込むような色をしてて。
なおかつ品がある。
俺は、花を見ながらぽつりと言った。
「……俺だってさ。この恋が本当に叶うなんて思ってないんだ。だけど……ちょっとくらい夢を見たっていいじゃん?」
「……マサキ様……」
「何もかもをかなぐり捨てて突っ走るには、ちょっと持ってる荷物が多すぎるのは、自分でもわかってるよ……」
カサカサ音をたてて花束を抱え直す。
ダイゴが優しい眼差しで俺を見てるのが分かって、自嘲気味に微笑んだ。
「だからさ、身動きできるうちは、好き勝手やっちゃおって思ってさ」
「……マサキ様………」
「こんなに自分の気持ちに正直に動けるのって貴重じゃん?」
「ふふ……なんだかサトコ様も気の休まるときがないでしょうね」
「あの怒鳴り声きくのも快感なんだよね~」
「マゾですか」
「そーかも(笑)」
ひとしきり笑って。
ダイゴは、ふと真面目な顔になった。
「私はどこまでもマサキ様にお付き合いしますよ」
「……ダイゴ……」
「マサキ様のやりたいようになさってください」
