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キラキラ

第29章 バースト7


帰り道、駅前の本屋に入って、文庫コーナーへ。


今度、翔と見に行く予定の映画の原作本を探す。
もともと読書は好きだったけれど、翔とつきあうようになって、さらに本の虫になった気がする。


学校と公共の図書館だけでは足りなくて。
懐が少し潤ってる時は、こうやって本屋にまで足を運ぶようになった。



つくづく見た目のキャラと違うな、と、雅紀には笑われるけれどな……。


うろうろして、平積みされてる場所にお目当てのものをみつける。
アクション好きの俺らにしたら、珍しく、感動もの。
ずっと気になっていた作品で、聞くと、翔も時間があればいってみたいと思っていたものだったらしい。

ひとつ問題なのは、最近涙腺のゆるい俺が、最後まで泣かずに観れるかどうかということ。


翔の前では、あんまり泣きたくないんだけどなぁ。
からかわれちゃうからなぁ……。


翔の顔を思い浮かべると自然と顔がにやけてしまう。

緩む頬を我慢しつつ、それを手にしようとしたら、横から別の手がさっとのびてきて、俺が取ろうとしたその山の一冊目をとった。


……ちっ


若干の不愉快感を感じながら、その相手をチラリと見やる。


すると、そいつ……大学生くらいの風体のその男は、えらく爽やかに微笑んでいた。



…………なんだ、気持ち悪ぃやつだな。



直感的に警戒モードになった俺は、目をふせ、自分のぶんの本を手に取ると、さっさと会計に向かおうとした。
するとそいつは、


「君も、この作家好き?」


と、聞いてくる。


は?と思ったけど、無視するのもややこしい気がして、はぁ……まあ、とむにゃむにゃ言葉を濁しうなずいた。


「僕もだ。いいよね、この人の作品」


にこやかに、同意を求めてくるけれど。
誰?あんた、の世界だ。


………変なやつ。
関わらないのが一番だな……。


曖昧に頷いて、俺はそこから無視を決め込み、本屋をあとにした。

その間なんだかずっと視線を感じていたが、あえて気づかないふりをした。


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