
キラキラ
第29章 バースト7
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待ち合わせ場所に早く着いてしまい、ウォークマンのイヤホンを耳に突っ込んだまま、ぼんやりと目の前を歩く人波を眺めていたら、ふいに後ろから、ポンポンと頭を優しくたたかれた。
「わり。遅くなった」
「……ううん。俺が早く来すぎたから」
優しく微笑む翔に、首をふり、イヤホンをボディーバッグにしまった。
「なに聞いてたんだ?」
「んー、かずのオススメの曲。なかなかいーよ」
「へえ……あいつ、どんな音楽聞くの?」
「知らない?」
俺はしまったばかりのイヤホンをもう一度引っ張りだし、翔に渡した。
翔が両耳にそれらをいれたのを確認し、たった今まで聞いていた曲を再生する。
切ないような透き通るような声をした男性アーティスト。
不思議なメロディが耳に優しくて、俺はすぐ好きになったけど。
翔も好きになってくれるかな……?
少し顔を伏せて、曲に聞き入る翔を見つめた。
カーキ色のロングカーディガンの袖をまくった腕は男っぽくて。
細身のスキニーパンツが、大人っぽくて。
大学生になってから、翔は急にカッコよさに拍車がかかった気がする。
ちょっとその姿に見とれていたら、ふいに翔が視線をあげ、そのクリっとした大きな瞳を俺に向けた。
思わずドキリとする。
「ああ……いいな、これ。俺も好きかも」
「……でしょ」
見つめられただけで、いまだにどぎまぎしてしまう自分に慌てながら答えたら、翔が困ったような顔になりイヤホンを外した。
「……んだよ。可愛い顔して」
「かっ……可愛くないよ!」
カッと頬が赤くなるのを自覚する。
ふーん……と、にやにやする翔の腕を無理やり引っ張った。
「ほら!映画始まっちゃうよ!」
「……はいはい」
そのまま翔が、するりと指をからめてきて手を繋ぎそうになり、俺は慌ててその手を振り払った。
「……外だから!」
「……はいはい(笑)」
完全に遊ばれてる……。
でも、そんなやりとりも嬉しくて。
俺は、久しぶりの翔との映画を楽しもうと、こないだ買った原作本の話題をふった。
待ち合わせ場所に早く着いてしまい、ウォークマンのイヤホンを耳に突っ込んだまま、ぼんやりと目の前を歩く人波を眺めていたら、ふいに後ろから、ポンポンと頭を優しくたたかれた。
「わり。遅くなった」
「……ううん。俺が早く来すぎたから」
優しく微笑む翔に、首をふり、イヤホンをボディーバッグにしまった。
「なに聞いてたんだ?」
「んー、かずのオススメの曲。なかなかいーよ」
「へえ……あいつ、どんな音楽聞くの?」
「知らない?」
俺はしまったばかりのイヤホンをもう一度引っ張りだし、翔に渡した。
翔が両耳にそれらをいれたのを確認し、たった今まで聞いていた曲を再生する。
切ないような透き通るような声をした男性アーティスト。
不思議なメロディが耳に優しくて、俺はすぐ好きになったけど。
翔も好きになってくれるかな……?
少し顔を伏せて、曲に聞き入る翔を見つめた。
カーキ色のロングカーディガンの袖をまくった腕は男っぽくて。
細身のスキニーパンツが、大人っぽくて。
大学生になってから、翔は急にカッコよさに拍車がかかった気がする。
ちょっとその姿に見とれていたら、ふいに翔が視線をあげ、そのクリっとした大きな瞳を俺に向けた。
思わずドキリとする。
「ああ……いいな、これ。俺も好きかも」
「……でしょ」
見つめられただけで、いまだにどぎまぎしてしまう自分に慌てながら答えたら、翔が困ったような顔になりイヤホンを外した。
「……んだよ。可愛い顔して」
「かっ……可愛くないよ!」
カッと頬が赤くなるのを自覚する。
ふーん……と、にやにやする翔の腕を無理やり引っ張った。
「ほら!映画始まっちゃうよ!」
「……はいはい」
そのまま翔が、するりと指をからめてきて手を繋ぎそうになり、俺は慌ててその手を振り払った。
「……外だから!」
「……はいはい(笑)」
完全に遊ばれてる……。
でも、そんなやりとりも嬉しくて。
俺は、久しぶりの翔との映画を楽しもうと、こないだ買った原作本の話題をふった。
