
キラキラ
第29章 バースト7
「ちぇ……」
言って、しぶしぶ腰をひいた。
ズルリとでてきた己に呼応して、
「…………んっ」
思わず背中を仰け反らせる潤。
このちょっと苦しげな顔もそそるんだけど、そんなことを言ったら今度こそ変態扱いされるから黙っておくことにする。
「……なに」
「いや、なんでも」
にやつきかけた俺の表情を、めざとく見つけた潤がとがめるような視線をよこしたものだから、慌てて顔をもとにもどした。
本質は可愛らしく俺に甘えてくる恋人も、外の別の顔は、ケンカに強いやんちゃな男。
その目力は、半端ない。
あぶねーあぶねー。
後始末をしながら、時計を確認すれば、夕方六時半。
確かにさっさとしないと、智兄が帰ってくる。
かずは、相葉くんと出かけるって言ってたから、まだ大丈夫だろうけれど。
気だるく横になったままの潤にキスをおとし、
立ちあがり、床におちてるタオルを腰にまいた。
「シャワー行くか」
「……うん」
「じっとしてろよ」
俺はチカラを使って、潤を浮かし、ふわりと抱えた。
一切重力のかかってない体は、羽のように軽くて。
「……便利な能力だね」
笑って、きゅっと首にまきついてくる潤は、安心して、その身を俺に委ねる。
「だろ?」
言って、二人くっついたまま、自室のドアを開けた瞬間だった。
「あ……」
ちょうど帰宅したばかりの智兄が、廊下を歩いてきたのにバッタリ遭遇。
潤を抱えたまま思わず体が固まる。
智兄も、目を丸くした。
…………一瞬だけ時が止まった……と思う。
「…っ……??!!」
声にならない声をあげて、俺にしがみついた潤と。
「……えっと、おかえり……」
と、間抜けに言った俺と。
「……ただいま」
と苦笑いして言った智兄が同時だった。
