
キラキラ
第29章 バースト7
やがて、嵐のようにうずまいていた潤の気の流れが、徐々におさまってゆく。
首筋を流れる汗が、時折大きくゆれる肩が、彼の集中を物語っているようで。
俺は黙って背中から自分のチカラを流し、サポートし続けた。
そして。
ポツン……と静かな水面に波紋が広がるような感覚を最後に、しん、と全てが静かになった。
「潤……?」
呼び掛けても反応がない。
俺は潤の丸まった背中を、トントンとたたき、その伏せた顔をのぞきこむ。
……当然といえば当然の流れ。
潤は、そのまま気を失うように深い眠りに入っていた。
情事のあとで、ただでさえも体力を削がれているのに、駄々漏れなチカラをおさめる精神力を使い果たし、限界だったに違いなかった。
俺は、温かなタオルで、潤の体を手早くふきあげてやり、俺のスエットを着せてやった。
ぴくりともしない白い顔色が気にはなるが、とりあえず呼吸は安定してる。
第一、睡眠しか回復する術はないので、このまま様子をみるしかない。
今日は土曜日。
……もともと、久しぶりにうちに泊まらせる予定にしておいたし。
このまま眠らせよう。
「おやすみ……」
届くように、と、耳もとで囁いて、額にキスし、灯りを消した。
おそるおそるリビングに戻ると、部屋着に着替えた智兄が、すでに缶ビールをあけていた。
俺が部屋に戻ってきたのを、チラ、と見上げ、手元のピスタチオの殻をパキリと割る。
「……潤は?」
大丈夫なのか、という目で問われ、俺はうん、と頷いた。
「眠った」
「そうか……」
「あの……智兄?」
「ん?」
智兄は、またパキリと殻をわり、中身をぽいと口に入れた。
俺が、なんといっていいか分からずに、口ごもっていたら、智兄は、面白そうにふふっと笑って、
「……別に俺はなんとも思わないけどさ。潤はすごい気まずいだろうから、フォローしてやれよ?」
「……うん」
「帰ってきたのが真っ最中じゃなくて良かったわ」
「……ほんとに」
「つか、時間考えろ」
「はい」
素直に返事をしたら、智兄はにやっと笑って、またビールの缶を傾けた。
